本研究では,慢性疼痛を発生していない地域在住高齢者に対する身体活動量の向上を図る介入プログラムを開発し,疼痛の新規発生を長期的に予防するか否かについてランダム化比較対照試験で検証することを目的としている.具体的には,研究対象者を運動教室への参加に加え,身体活動量の向上を図る介入群,運動教室のみに参加する対照群にランダムに振り分け,2群間での介入効果の違いを明らかにする. 最終年度(2023年度)は,2クール目の研究対象者に対して運動教室終了1年後に追跡調査を行い,全ての対象者に対する介入と追跡調査が完遂した.1クール目と2クール目を通してランダムに割り付けられた対象者は,介入群40名,対照群39名であり,追跡調査の完遂者は介入群33名,対照群34名であった.ベースライン時の各評価項目を2群間で比較した結果,全てにおいて有意差を認めなかった.また,介入終了時の疼痛の新規発生者は,介入群が対照群に比べ有意に低値を示したが,追跡調査時では2群間に有意差を認めなかった.一方,介入終了時の身体活動量は介入群が対照群に比べ有意に高値を示し,介入群は介入前より有意に改善したが,追跡調査時では2群間に有意差を認めず,介入群は介入終了時より有意に低下した.慢性疼痛を発生していない地域在住高齢者に対する身体活動量の向上を図る介入プログラムは,介入期間中の疼痛の新規発生を予防するが,その予防効果の持続には限界があることが明らかとなった.本研究より,介入による身体活動量の変化と疼痛の新規発生には密接な関連があることが示唆され,この点は高齢期における疼痛の一次予防対策に寄与する重要な知見と思われる.
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