| 研究課題/領域番号 |
19K19870
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| 研究機関 | 大分大学 |
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研究代表者 |
坪内 優太 大分大学, 医学部, 理学療法士 (90833773)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 骨粗鬆症 / 運動療法 / 骨粗鬆症治療薬 / 骨微細構造 / 骨強度 / サルコペニア / ゾレドロネート |
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| 研究実績の概要 |
骨粗鬆症の治療は，一般的に薬物療法と運動療法が実施されており，薬物療法については，その臨床的効果も示されてきている．一方で，運動療法の効果に関する研究はあるものの，骨強度の規定因子の一つである骨微細構造への効果を示す報告は少ない．また，臨床で一般的に実施されている運動療法と薬物療法の併用による効果を示した報告は少ない．
我々はラット骨粗鬆症モデルへの薬物療法と運動療法の併用が骨微細構造および骨強度に与える影響を検討した．
骨微細構造の解析にはμCTを使用した．また，骨強度の計測として3点曲げ試験を実施した．
運動療法のみ実施したラットにおいては海綿骨の骨量や骨梁幅の増加など，微細構造の改善を認めた．また，最大圧縮荷重やヤング率など骨強度の改善も認めた．一方で，薬物療法のみを実施したラットでは骨微細構造や骨強度の改善を認めなかった．さらに，薬物療法と運動療法を併用したラットにおいては，運動療法のみを実施したラットと比較して，より大きく骨微細構造と骨強度の改善を認めた．
今回の研究で用いている骨粗鬆症治療薬は，破骨細胞のアポトーシスを促す骨吸収抑制剤であり，骨代謝回転を低下させることで，骨密度や骨微細構造の維持・改善を図る骨粗鬆症治療薬である．一方で，運動療法は荷重や筋収縮によるメカニカルストレス，骨格筋から分泌されるサイトカインによって，骨形成を促進させる効果があるとされている．本研究の結果から，薬物療法のみでは骨微細構造や骨強度に対する効果は不十分である可能性が示唆された．今後は骨格筋に対する効果を検討し，骨粗鬆症治療薬と運動療法の併用がサルコペニア治療に有用であるのかを探っていく．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理工学部と共同研究により作成している3点曲げ試験機にて骨強度試験を実施した．得られた最大荷重点と破断変位より，剛性 (スティフネス)やヤング率，破断エネルギーを算出している．圧縮荷重開始点の設定によってはヤング率の値が変わってしまい，その他の項目の解析結果も変化してしまう．それらの点を含め，解析方法についての確認も理工学部と共同で実施した．
さらに，骨強度試験に用いた骨を使用し，大分大学全学研究推進機構の協力の下，走査型電子顕微鏡 (日立社製S-4800) を用いた皮質骨の微細構造の観察を行った．骨強度試験は皮質骨の骨密度や微細構造によって規定されるが，μCTでは皮質骨の微細構造を観察することは困難である．そこで，走査型電子顕微鏡を用いて，皮質骨の微細構造的な差異を明確に示すことで，骨強度試験の結果の裏付けを行なった．
他学部と共同で実施する作業が多かったこともあり，COVID-19の影響で実験が実施できない時期もあったが，当初の予定から大きく逸れることなく進展している．
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| 今後の研究の推進方策 |
骨格筋の解析として，HE染色による腓腹筋の標本を作成し，画像解析ソフト (フリーソフトImage J) にて筋線維100本の横断面積と脂肪組織の面積をそれぞれ測定する．加えて，骨格筋の老化・脂肪化についての解析を病理組織学的検討にて実施する．骨格筋老化の所見に脂肪細胞の増加があり，間質に存在する血小板由来増殖因子受容体α (PDGFRα) 陽性の間葉系前駆細胞が分化するためであると報告されている．そこで，PDGFRα陽性細胞と脂肪細胞 (ペリリピンなど使用)を染色し，細胞数や脂肪細胞への分化の状態を確認する．
また，病理組織学的解析では困難である3次元的解析をμCTで実施する予定ある．採取した腓腹筋にリン・タングステン酸染色 (PTA染色) を行った後にμCTでの撮影を実施する．PTAは様々なタンパク質や生体組織と強く結合することが知られており，X線イメージングに有用な染色剤であることが報告されている．撮影データを用いて，骨格筋内の筋繊維と脂肪組織の体積をそれぞれ算出する．
これまでに得られたデータより，骨粗鬆症治療薬や運動療法が骨および骨格筋に与える効果を検討し，高齢者骨粗鬆症およびサルコペニアに対する有効な治療法の開発を目指す．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響から参加予定であった国際学会が延期となり、さらに国内開催の学会もオンライン開催となったため、旅費の支出が皆無であった．さらに他の実験で使用した物品や薬剤を利用したことにより，想定よりも物品費の支出が抑えられた．当初の実験計画にはなかった，μCTによる骨格筋の解析に染色のため必要な薬剤や，撮影に必要な物品を購入するため，未使用分の費用はそちらの予算に利用する予定である．
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