ラット骨粗鬆症モデルへの薬物療法と運動療法の併用が骨微細構造および骨強度に与える影響を検討した。骨微細構造の解析にはμCTを使用した。また、骨強度の計測として大分大学理工学部に協力を依頼し、3点曲げ試験を実施した。 運動療法のみ実施したラットにおいては海綿骨の骨量や骨梁幅の増加など、微細構造の改善を認めた。また、最大圧縮荷重やヤング率など骨強度の改善も認めた。一方で、薬物療法のみを実施したラットでは骨微細構造や骨強度の改善を認めなかった。さらに、薬物療法と運動療法を併用したラットにおいては、運動療法のみを実施したラットと比較して、より大きく骨微細構造と骨強度の改善を認めた。また、薬物療法と運動療法を併用したラットでは、骨格筋(腓腹筋)の湿重量が増加と筋繊維の肥大が確認された。 今回の研究で用いている骨粗鬆症治療薬は、破骨細胞のアポトーシスを促す骨吸収抑制剤であり、骨代謝回転を低下させることで、骨密度や骨微細構造の維持・ 改善を図る骨粗鬆症治療薬である。一方で,運動療法は荷重や筋収縮によるメカニカルストレス、骨格筋から分泌されるサイトカインによって、骨形成を促進させる効果があるとされている。本研究の結果から、薬物療法のみでは骨微細構造や骨強度に対する効果は不十分である可能性が示唆された。さらに、薬物療法と運動療法の併用により、骨吸収を抑制しつつ、骨形成を促進させて骨微細構造の改善させる可能性が示唆された。また、骨粗鬆症治療薬と運動療法の併用により骨格筋の増加につながる可能性も示唆された。骨粗鬆症治療薬が骨格筋に与える影響は、これまでも調査が少ないことから、今回の知見はサルコペニアに対する新たな治療戦略の開発につながる可能性がある。
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