超高齢化社会を迎えたわが国において、加齢に伴う筋力低下 (サルコペニア) とそれに対する治療介入が注目されている。透析領域は高齢化が進み、透析中の長時間に及ぶ「安静・臥床」、さらに「低栄養」が筋力低下に関連することが窺われるが、詳細な検討は行われていない。 研究実施者は、これまで単施設のコホートで、サルコペニアを有する血液透析患者に対し、透析中に行うリハビリテーションや栄養療法の効果を検討し、両者の併用が有効であることを報告してきた。本研究では、一群の介入研究を多施設に展開し、実現可能性や一般化可能性を明らかにすることを主目的とする。さらに、サルコペニアへの介入が、MIA 症候群や抑うつ状態を改善させることを示せれば、健康寿命延伸や医療費削減の観点から社会に対して貢献し得る。 初年度後半から、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) パンデミックの影響で、研究実施が困難となった。各透析医療施設においてクラスターの発生が懸念される状況から、本研究の核となるリハビリテーションの実施が極めて困難とあり、研究計画で考えていた症例数の積み上げは不能となった。初年度は研究計画の立案と係る資材の準備後、3施設と協議を行い、COVID-19感染拡大前に倫理委員会等の準備が可能であった1施設の協力を得て、計3例の登録はできた。2年目、3年目は実施に至る前に次の波が到来するということを繰り返し、施設協力が得られず、症例の積み上げが不能となった。 症例は少ないが、別施設の協力にて実現可能性については検証した。今後はウィズコロナでの透析患者や医療者側のリハビリテーションへのhesitateが少なった折を見計らい、不足した分の研究を再開し、本研究の主目的である一般化可能性を判断したい。別途、資金が獲得できれば、関連するバイオマーカー研究についても検証を試みる。
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