健常な若年者と高齢者において、バランス能力の指標である片脚立位保持中での足趾運動の身体の揺れに対する協調性と足趾と股関節運動との協調関係において違いがあるかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。 対象者に、足圧分布計(アニマ株式会社)上で片脚立位の保持をしてもらうよう指示した。支持脚は、非利き足とした。背部よりデジタルビデオカメラで対象者の片脚立位保持中の身体の動きを記録した。足圧分布計データは、機器内で算出された足圧中心データと各足裏の経時的な圧力変化データを使用した。圧力データでは、母趾、第1中足指節関節部(MP部)、小趾、第5MP部の4か所の圧力変化データを算出した。さらに、足圧中心データと各4部位の協調関係の度合いを、相互相関関数を使用して解析した。ビデオカメラの映像は、FrameDias V(DKH)を使用して、両骨盤と両肩甲骨の動きをデジタイズした(30 fps)。デジタイズされた座標から骨盤の傾斜角と肩甲帯の傾斜角を算出した。 足趾の協調性については、母趾の相関係数が高齢者で若年者と比較して有意に低かった。一方、小趾の相関係数は高齢者の方が若年者よりも高かった。これらの知見は、片脚立位を保持する能力が低い原因の一つに、母趾が関与していることを示唆している。一方で、小趾の相関係数が高齢者よりも若年者で高かったことは、その母趾の片脚立位保持への関与の低さを代償していることを示唆している。さらに、体節間の協調性として、骨盤の傾斜角と肩甲帯の傾斜角の協調運動関係では、若年者ではおおよそ逆位相であったのに対して、高齢者では同位相であった。つまり、若年者では、体幹の側屈運動を適切に行って重心位置を制御しているが、高齢者では体幹の側屈運動がなく、一つの剛体として制御しているため重心位置の変位が大きくなり、片脚立位の保持時間が若年者よりも短くなると考えられる。
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