研究課題/領域番号 |
19K19886
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川上 途行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80424133)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 上肢麻痺 / リハビリテーション / ロボット |
研究実績の概要 |
脳卒中は患者数が350万人と推計され国民の健康福祉及び医療経済への影響が大きい。2018年には臨床アウトカム志向の診療・介護報酬の同時改定が行われ、質の高いリハ医療が必要とされる中、患者の社会復帰は未だ十分に達成できていない。慢性期の脳卒中患者において、運動機能改善は難しいとされ、特に日常生活動作に密接に関連する「肩関節の抗重力方向への運動」に関しては、治療手段が非常に限られているという課題がある。 本研究内で、我々はまず、脳卒中片麻痺患者における肩屈曲運動時の関連筋における筋電パターンの測定を行った。肩関節屈曲の主導筋である三角筋前部線維の活動の強弱が一つ目の要素として確かめられた。また、脳卒中患者の異常な筋シナジーに関連する上腕二頭筋、大胸筋等の活動の強弱が独立した要素としてわかった。この二軸での分類が可能であることが確かめられた。 次に、治療ターゲットの同定、すなわち最適な介助量にて運動をすることで筋活動パターンが変化しうるのかが確認された。最適な介助量は、筋シナジーパターンに関連する筋活動を抑制しながら、三角筋の筋活動を落とさない、もしくは向上させるものであることを示した。そのため、治療ターゲットとして最も効果が期待できる治療ターゲット層は、肩関節屈曲時に三角筋の筋活動が消失しておらず、異常な筋シナジーパターンを強く呈している患者であることがわかった。これらの特徴を有する患者を対象とし、次年度は肩機能障害に対するロボットリハビリテーションの効果の検証介入を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年の課題は、1)脳卒中片麻痺者の肩運動時の筋活動パターンの分類化(2019年度課題)、2)脳卒中片麻痺者の適切な筋活動を引き出す最適な介助量の同定(2019, 2020年度課題)を計画していたため、上記の通り、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
脳卒中患者の垂直方向(抗重力方向)への肩関節運動の機能改善は難しいことが知られており、ほとんど報告がない。2019年の成果により、脳卒中患者の肩筋電パターンの分類分けが行われ、治療ターゲットの同定が行われた。これにより、介入ターゲットが明らかになった。また、同様に2019年度の成果により最適介助量が定義され、介入内容の方向付けが完了した。これらの成果を生かし、2020年度には最適介助量の確定を踏まえ、脳卒中片麻痺者の肩機能障害に対するロボットリハビリテーションの効果の検証介入を行う。具体的には慢性期脳卒中上肢運動麻痺者を対象とし、ABABデザインで介入研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はおおむね順調に推移したが、来年度は介入研究を控えており、人件費等で使用する予定である。
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