研究課題/領域番号 |
19K19894
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
江村 健児 姫路獨協大学, 医療保健学部, 准教授 (10514060)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胸鎖関節 / 末梢神経 / 肉眼解剖学 / 神経支配 |
研究実績の概要 |
胸鎖関節は体幹と上肢帯を結ぶ唯一の関節であり、胸鎖関節で生じる動きは肩甲骨の運動を考える上で非常に重要である。関節の運動制御には、関節の構造的要素に加えて関節そのものにおける固有感覚が不可欠である。しかし、胸鎖関節については、どのような末梢神経がどのような経路で関節に分布するのか未だ明確でなく、関節の固有感覚を伝える経路が不明である。そこで本研究課題では、ヒト胸鎖関節には、どの神経がどのような経路で分布するのかを明らかにすることを主な目的とした。 2019年度は、ヒト胸鎖関節10例を用いて胸鎖関節に到達する末梢神経の走行や分布領域について検討した。その結果、10例全てにおいて内側鎖骨上神経から分かれた細い神経枝が鎖骨上面から前面の骨膜内を進んだ後、胸鎖関節の前部または上内側部付近に到達した。また、大半の例で外側胸筋神経の枝が大胸筋の深層を内側へと進み、胸鎖関節の外側部付近に到達した。これらの神経は極めて細く、胸鎖関節への分布様式について単純に肉眼で観察するには限界があった。そのため、神経を染色して観察する方法を試みた。まず先行文献で末梢神経を染色する方法として記載のあったアリザリンレッドによる神経染色を試みたが、良好な染色結果を得られなかった。そこで、別の文献に記載のあったズダンブラックBによる神経染色を試み、改良の余地はあるものの、アリザリンレッドによる染色よりは良好な結果を得た。さらに良好な染色結果を得るため染色法について現在も試行錯誤をしている。2019年度途中までの研究成果は第125回日本解剖学会・全国学術集会(誌上開催)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所見を収集した例数については、ほぼ当初計画通りであり研究の進展に大きな問題はない。しかし、神経を染色する方法については未だ改良の必要があり、場合によっては現在行っているズダンブラックBによる方法に拘らず他の方法を模索する必要性が生じることも考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はまず観察例数を増やし、当初計画通り計25例程度となることを目指す。また神経の染色法についても引き続き改良を行い、より良好な染色結果が得られるようにしていきたい。どうしても期待通りの染色結果が得られない場合には組織切片の作成による神経分布の追求など代替手段を考慮する。また、これまでに本研究で観察された内側鎖骨上神経と外側胸筋神経の枝以外に、経路は不明であるが鎖骨下筋神経の枝が胸鎖関節に分布するとの記載も一部の先行文献にある。一般的に、鎖骨下筋神経が腕神経叢から分かれ出てから鎖骨下筋に入るまでの間にそのような神経が分岐することは考えにくいが、可能性としては鎖骨下筋神経が鎖骨下筋に入った後、一部の枝が同筋内を走行し、通り抜けて胸鎖関節に達することはあり得るかもしれない。実際にそのような走行をする神経があるかどうか検証することも、2020年度以降の課題としたい。2020年度後半からは収集したデータのまとめ、分析にも注力し、学会報告などで議論を行うことでさらなる研究の進展を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプル1例あたりに使用する薬品量が当初の見積りよりも少なく済んでいること、電子天秤を購入予定であったが研究施設内の既存のものが使用可能になったこと、参加予定であった学会が通常の学術集会から誌上開催へと変更され旅費の使用額が予定より減少したことなどが理由として挙げられる。次年度使用額は、来年度以降収集するデータ解析に必要な諸経費、また学会発表や論文作成に必要な経費として使用する予定である。また、新たな染色法などを試みる場合に、必要な試薬や器具を追加で購入する可能性が考えられる。
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