研究課題/領域番号 |
19K19901
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
萬井 太規 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (10765514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動発達 / 歩行 / 姿勢制御 / 運動制御 / 協調運動 / 動作解析 |
研究実績の概要 |
令和3年度では,発達性協調運動障害の歩行制御特性も示す必要があると考え,その基礎データとなる歩行制御の定型発達過程について詳細な分析を行った. 歩行の制御は,5つの機能(歩調,時間因子,左右対称性,変動性,および安定性)で構成されていることが高齢者やパーキンソン病患者の歩行から示されている.しかし,5つの機能の小児期の発達特性は明らかではなかった.研究1では,歩行の5つの機能の発達過程を示すことを目的に,3~10歳児77人の歩行データを分析した.本研究結果から,①基本的な歩行パターンを示す歩調,時間因子,左右対称性は7歳から成人同等となること,②歩行の特性を示す変動性や安定性は,10歳でも成人レベルまで発達していないことが明らかとなった.しかしながら,研究1では歩行機能の発達に関連する要因の分析が不十分であった. そこで研究2では,歩行の安定性の発達に関連する要因を明らかにするため,歩行時の重心動揺と上肢,下肢,体幹の肢節間協調性の発達過程,およびそれらの関連性を示すことを目的とした.本研究結果から,①歩行時の重心動揺は10歳でも成人と同等ではない,②発達に伴い,同側の上肢と下肢が相同的に動く協調パターンから対側の上肢と下肢が相同的に動く協調パターンへと発達し,この協調パターンの獲得が重心動揺の減少と関連する,最後に,③体幹と骨盤の協調的な回旋運動も歩行時の重心動揺の減少と関連することが明らかになった. 本研究により,5つの歩行機能の発達は異なることから,発達性協調運動障害児においては,歩幅や歩行速度といった単純な歩行変数の比較だけではなく,5つの機能から病態を評価する必要性が示唆された.さらに,歩行の安定性は,四肢,体幹の協調運動の発達が重要な要因であるため,歩行が苦手となる発達性協調運動障害の四肢・体幹の協調運動に関して分析する必要性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予測的姿勢制御の定型発達過程の検証に加え,歩行制御の定型発達過程を示すまでに至り,定型発達児のデータ収集,分析は順調に進められている.しかしながら,発達性協調運動障害児のデータ収集が予定よりも進められていない状況である.新型コロナウイルス感染症により連携施設でのデータ収集が困難となっていることが原因である.連携施設と密に連絡を取り,感染対策を徹底することで記録を可能にする方法を検討している状況である.また,連携施設の拡充も進めており,新たな連携施設でもデータ収集が可能となるように進めている.
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今後の研究の推進方策 |
連携施設でのデータ収集が可能になった際には,発達性協調性運動障害児のデータ収集を再開し,発達性協調運動障害児の予測的姿勢制御の特性を明らかにしていく. また,定型発達児のデータ収集は続けているが,未だに予測的姿勢制御(APAs)の性差の特徴を検出できていない.対象者数を更に増やしていくために,自施設だけでなく多施設からも小児データが収集出来るよう共同研究施設の拡充を進めている状況である.さらに,APAsは16~18歳前後まで発達するとの報告もあることから,対象年齢を3~18歳まで拡大し,定型児のデータ数を増やしていくとともに,APAsの性差の特性,および学童期,思春期におけるAPAsの発達過程の解明も進めていく.
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