研究実績の概要 |
本年度は,発達性協調運動障害児(DCD)のデータを拡充するために,マーカーレスモーションキャプチャシステム(反射マーカーの貼付を必要とせずに,ビデオカメラ画像から動作を解析する手法)の環境を整えることができた.札幌医科大学付属病院や大分県内の幼稚園等の連携施設でデータ収集する事が可能となり,定型発達児の乳幼児期の応用歩行の特性について重要な知見を報告する事が出来た(Yoshimoto et al., 2023).本研究では,2~5歳児の応用歩行(障害物またぎ歩行)の姿勢安定性と動作パターンの特性を明らかにする事を目的に,歩行路の途中に設置された下肢長の10%の高さの障害物を跨ぐ事を対象者に指示した.本研究より,2歳から障害物に足を引っかける事無く歩行は出来るものの,低年齢児ほど障害物をまたぐ際の姿勢安定性,特に側方の動的安定性が低下していることが明らかとなった. さらに,DCD児の歩行中に高頻度で観測される歩行時の蛇行の定型発達過程についても示すことが出来た(Miyagishima et al., 2023).我々は,ゴールに設置された目標物に向かう直線に対する身体位置との距離を蛇行した歩行と定義し,体重心(COM)の位置と速度の両方を加味した外挿COMを用いて蛇行の定量化を試みた.その結果,低年齢児ほど,スタート位置からゴール地点の目標物を結ぶ直線と外挿COM間との距離が大きく,蛇行した歩行であることが明らかとなった.この距離は,7歳以降から成人と同等となることから,蛇行の小さい直線歩行は7歳頃に獲得されていることが示唆された.本研究の分析手法により,DCD児の蛇行した歩行を定量化する事ができると考えており,今後,DCD児の蛇行の特性,および蛇行に関連する因子について検証を進めていく予定である.
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