口唇口蓋裂の治療は出生直後から青年期まで長期にわたる。主な治療目的は良好な顎発育と言語機能の獲得であり、最終的に形態と機能の調和がとれた治療体系の確立に向けて、治療管理方法の有効性と問題点を検証していく責務がある。また、各施設間でそれらを比較検討するうえで、患児の発育が完了した青年期までの長期的な治療成績を明らかにする必要がある。そこで、新潟大学顎顔面口腔外科では、1983年より欧州の先駆的な治療体系を参考に、二段階口蓋形成手術方(口蓋形成を軟口蓋と硬口蓋の二段階に分ける方法)を施行してきた。当科の過去の研究成果により、1996年に軟口蓋形成手術法を変更し、顎発育だけでなく言語機能の獲得にも可及的に良好な治療成績を報告してきたが、言語成績の更なる向上を目指し、2010年には硬口蓋閉鎖時期を5歳半から4歳へ早期移行した。本研究では、この硬口蓋閉鎖時期の早期移行が長期的な言語機能獲得に有効かどうか、硬口蓋閉鎖術を4歳で施行した群(4歳群)と5歳半で施行した群(5歳半群)の4歳時から16歳時までの長期的な言語成績を、音声言語の聴覚判定と音響特性の定量評価により調査分析し、比較検討することで解明することした。なお、本年度は本研究データを裏付けるべく、患児の軟口蓋形成術前の裂幅に関する分析を追加検討することで多方面から検証し、本研究テーマは当初の予定よりも順調に発展してきた。本研究の成果は口唇口蓋裂の治療体系と音声言語領域の発展に寄与できる。
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