研究課題/領域番号 |
19K19909
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
陶山 和晃 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (50836236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | COPD / 遠隔的呼吸リハビリテーション / 試験的検証 / プログラム実施状況 / 安全性 / 満足度 |
研究実績の概要 |
2019年度は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する遠隔的呼吸リハビリテーション(PTR)の実施環境の構築と試験的運用を行ってきた. 先行研究を参照にPTRプログラムを設定し,マニュアルを作成することで標準化を図った.さらに,リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドラインに準じてPTRの中止基準を確立し,緊急時の体制を明確化した.その後はPTR実施のシュミレーションを重ね,安全性や通信トラブル,視聴覚的問題点がないかを事前に確認した.そして,長崎大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会への申請・承認(許可番号:19111405)を経て試験的運用の開始に至った. 対象は外来通院中の在宅COPD患者とし,主治医より本研究への参加が許可された者より募集を行った.なお,重篤な併存疾患(例:肺高血圧症,悪性腫瘍)を有する者や過去3ヶ月以内にCOPDの急性増悪をきたした者は除外した.介入期間は4週間(1回/週)とし,医師によるオンライン問診を行なったのち,理学療法士による監視下で行われた.プログラムは主に呼吸練習や呼吸補助筋ストレッチ,四肢筋力増強練習,活動日誌を用いた身体活動指導で構成された.アウトカムはプログラム完遂率,有害事象,COPD Assessment Test(CAT),歩数,患者満足度とした.また,タブレットPCやパルスオキシメーター等のPTR関連機器の習熟度を計25項目・100点満点として評価した.結果として,現在4名のCOPD患者が対象となり,3名が完遂した.有害事象の発生はなく,患者満足度は全員が「とても満足,満足」と回答した.機器習熟度は平均47点から71点へ増加傾向を示した.一方,CATや歩数に関しては一定の傾向は得られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠隔的呼吸リハビリテーション(PTR)は本邦での前例がないため,2019年度は当該システムやハード面,実施体制の構築が最も重要な課題であった.したがって,これら実施環境を整え,本学倫理委員会にて承認が得られたことは,当初の予定から本研究の進捗状況を鑑みても概ね順調であったといえる.また,症例数は少ないものの,PTRの試験的検証を開始することができ,今後の課題を徐々に見出せたことも判断理由のひとつである.
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今後の研究の推進方策 |
まずは試験的検証を引き続き行いながら症例数を蓄積し,統計学的解析を用いて検証結果を明らかにしていく必要がある.また,現段階ではリハビリテーションに関連するアウトカムにおいて一定の傾向が得られていないため,検証結果を参照しながらPTRプロトコルの見直しを行う.これらの課題を解決した上で,今後はCOPD患者に対するPTRの介入効果に焦点を当て,研究デザインを立案していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
PTRを実施する上で必要な機器(タブレットPC,パルスオキシメーター,血圧計等)は物品費としてそれぞれ5台ずつ予算に計上し,購入予定としていた.しかし,まずは2019年度の試験的検証にてこれらの機器が本研究に適切か否かを確認する必要があると判断し,3台ずつの購入に留めていたことが次年度使用額が生じた理由である.今回の試験的検証を経て,これらの機器が本研究に適切と判断したため,次年度は当初予定していた通り,残り2台ずつの機器を物品費として追加購入する予定である.
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