研究課題
2020年度は2018,2019年度に計測したデータを基に,地域在住高齢者の歩行パラメータと各種測定項目等の関連についての解析を行った。使用した歩行パラメータは,ウェアラブル慣性センサーによって得られた骨盤・両側の大腿・下腿・足部の加速度・角加速度・傾斜角度から算出した。骨盤加速度より自己相関係数を用いて算出した歩行の定常性・対称性を用いた解析では,以下の点が明らかとなった。①地域在住高齢者において,下肢の筋量に左右差が存在した場合,歩行の定常性が低下し,特に筋量の低下がある場合に顕著にみられる,②地域在住高齢者は,加齢に伴い,骨盤の前後および左右の定常性が低下する,③地域在住高齢者において,歩行の鉛直方向における定常性・対称性は認知機能と関連し,軽度認知症(MCI)を有する高齢者においては,それらが低下する。また,大腿・下腿の傾斜角度から,膝関節角度を算出した結果,地域在住高齢者において,歩行中の膝関節最大屈曲角度が低下することが明らかとなり,この要素は歩行速度の影響を除去しても同様であった。さらに,Walk Ratio (歩幅を歩行率で除したもの)に,男性では握力,女性では骨格筋量が影響し,関節角度においては,男性では股関節伸展角度・足関節底屈角度・TLA,女性では足関節底屈角度・TLA が関連することが明らかとなった。これらの結果から,地域在住高齢者において,加齢や認知機能といった要素に,歩行パラメータが関連していることが明らかとなった。今後はさらに解析データを増やし,縦断的に解析を行う予定である。
3: やや遅れている
当初の予定では,複数年のデータを使用し,縦断的な解析を行い,予測因子の検討を行う予定であったが,解析がまだ十分に行えておらず,横断的な解析にとどまっている。
今後はさらにデータを整理し,縦断的な解析を行っていく。
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響でデータ計測が行えなかったため、その際に必要な人件費および旅費を使用しなかった。また,同様の理由で学会発表も全てWeb開催となったため,旅費を使用しなかった。データ解析結果の論文作成・投稿が行えず,投稿料として使用しなかった。2021年度はデータ計測が行われる予定のため,人件費・旅費等に使用する予定である。また,論文での成果発表も積極的に行っていきたい。
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