研究課題/領域番号 |
19K19911
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
阿部 真佐美 札幌医科大学, 保健医療学部, 研究員 (00829880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 集中治療室関連筋力低下 / ストレッチ / メカニカルストレス |
研究実績の概要 |
本研究では,安全かつマンパワーに頼らないICU関連筋力低下の治療方法の確立を全体構想とし,令和2年度には課題2として,反復性の持続的(Repetitive continuous: RC)ストレッチが,ICU関連筋力低下を「回復」するかどうかをモデル動物を用いて検討した(課題2). 課題2では,課題1で明らかとなった,脱神経(Denervation: DEN)後の筋力低下を一部予防しうるRCストレッチ条件(30分を12回/日)を参考に,すでに発症した筋力低下に対するRCストレッチの治療効果を検討した.Wistar系雄性ラットの両坐骨神経DEN処置後,明らかな筋力低下が生じる3日目と7日目から,RCストレッチを負荷する2群に分け,計5日間実施した.その結果,DEN後3日目からのRCストレッチ負荷は,クロナキシーの増大を一部抑制するが,DEN後7日目からRCストレッチを負荷しても,効果が認められないことが明らかとなった.これらの知見は,ICU関連筋力低下では,できるだけ早期からの介入が重要であることを示唆している. さらに,課題2では,ストレッチ介入が,DENに伴う筋力低下を軽減するメカニズムについて検討した.Wistar系雄性ラットを,DEN群,DEN処置を行った後,持続的に12時間のストレッチを一日一回負荷するDEN+ストレッチ群に分け,無処置の右後肢を対照群とした.その結果,持続的なストレッチは,DEN後早期に生じるクロナキシーの増大を軽減すること,また,その効果は,神経筋接合部の形態変化の抑制を伴うことが明らかとなった.したがって,ストレッチは,神経筋接合部の機能を保つことで,DEN後の筋力維持に寄与する可能性があることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題2として,DEN処置後筋力低下が生じた筋に対しRCストレッチの介入効果を検討した.その結果,DEN処置後早期からのストレッチ介入が,DENに伴うクロナキシーの増大を抑制することが示唆された.さらに,ストレッチがDEN処置後の筋力低下を軽減するメカニズムには,神経筋接合部の形態変化の抑制が関与することが示唆された.したがって,当初計画していた実験は予定通り実施できたことから,進捗状況としては,おおむね順調に進展していると判断した.ただし,DENに伴う興奮性低下に対するRCストレッチの効果は十分とは言えないため,臨床応用に向け,次年度には興奮性低下を抑制する効果的な方法をさらに検討したい.
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り,DEN処置した筋に対する早期のストレッチは,神経筋接合部の形態変化を抑制するとともに,DENに伴うクロナキシーの延長を抑制することが明らかとなった.しかしながら,DENに伴う筋力低下に対するRCストレッチの効果は十分とは言えないため,臨床応用に向け,さらに効果的な介入方法の開発が必要であると考えられる.先行研究において,電気刺激がDEN後の骨格筋の興奮性を回復することが報告されていることから,来年後はストレッチと電気刺激の併用が,DENに伴う興奮性低下に及ぼす影響を検討する.
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