脳損傷後のリハビリテーション(リハビリ)が効果的な時期が存在すると考えられているが、慢性期においても一定のリハビリの効果は認められる。では、機能回復の幅が大きいとされる回復期と慢性期リハビリによる機能回復メカニズムは同一であろうか。本研究では、回復期と慢性期に着目して、それぞれの神経回路再構築メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行ってきた。 これまでの成果として、内包出血モデルを作製し、AMPA受容体標識PET probeを用いたPET(AMPA受容体PET)撮像を進めてきた。2022年度の研究実績として、内包出血モデルラットを用いて、運動機能回復能とAMPA受容体高発現部位及び発現量の相関解析を実施した。損傷3か月後から1か月間のリハビリ(5日/週)を行うと、特に損傷半球の運動関連領野や線条体においてAMPA受容体高集積を認めた。また、リハビリを行った1か月間での運動機能回復能が優れている個体ほど運動関連領野のAMPA受容体高集積の体積が大きい傾向にあった。 次に、非損傷側に対する損傷側のAMPA受容体発現比を検討してみると、背側線条体や運動野、感覚野においては運動回復能と正の相関を示した。一方、腹側線条体においては両者に負の相関を認めた。これらの統合的な理解として、良好な運動機能回復を示した個体では、非損傷側に比べて損傷側のAMPA受容体量が多くなっており、損傷側においてのシナプス伝達機能が強調されている可能性が示唆された。
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