研究課題
関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)に対する薬物治療の進歩により関節炎の寛解が得られるようになったが、依然としてサルコペニアの罹患率が高くRA患者のADL障害の大きな要因となっている。一方、遅筋は速筋の約5倍マイオカインを分泌することがこれまで明らかになっており、遅筋の比率が高い下腿への刺激が全身の筋肥大をもたらすことができれば、サルコペニアの有効な治療法になり得ると考えた。動物関節炎モデルを用いて速筋と遅筋における影響について解析した。8週齢のDAラットを用いて、タイプ2コラーゲンによる関節炎を惹起し、関節炎モデル(CIA)ラットを作成した。関節炎惹起後6週の時点で、速筋線維の豊富な長趾伸筋にくらべて遅筋線維の豊富なヒラメ筋で筋肉の萎縮・線維化が起こっていた。次に免疫感作後2週目から4週間トレッドミル走行を行い、筋萎縮予防効果を検討した。関節炎が生じはじめる免疫感作後2週と6週の時点で、長趾伸筋とヒラメ筋におけるanabolic markerやcatabolic markerのmRNA発現をreal time RT-PCR法を用いて解析した。その結果、免疫感作後2週で筋たんぱく質のanabolic markerであるEif4eで、感作後4週でcatabolic markerであるAtrogin-1に運動の有無・筋肉の違いにおいて交互作用を認め、ヒラメ筋において発現が上昇していた。また、4週間の運動は遅筋で生じる筋萎縮を予防した。CIA ratでは遅筋に主に筋萎縮および線維化が起こるが、トレッドミル走行は筋肉の代謝回転を調節することで遅筋の萎縮や線維化を予防する可能性があると考えた。
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Journal of Muscle Research and Cell Motility
巻: 42 ページ: 429~441
10.1007/s10974-021-09610-0