研究課題
腫瘍微小環境は低グルコース・低酸素条件にあり、エネルギー代謝は解糖系に偏倚しているとされる。近年クレアチニン・キナーゼが糖代謝を介し癌の増殖及び転移に関係に関係するとの報告があり、解糖系、酸化的リン酸化に次ぐ第3のエネルギー経路として注目されている。しかし、クレアチニン・キナーゼの大腸癌に対する作用について報告したものはない。われわれは大腸癌細胞におけるクレアチニン・キナーゼ阻害薬の有効性を検討した。ヒト大腸癌細胞株HT29及びマウス大腸癌細胞株CT26を用いクレアチニン・キナーゼ阻害薬の増殖抑制効果を検討したところ、どちらの細胞でもクレアチニン・キナーゼ処理で有意な増殖抑制効果を示した。次に腫瘍細胞の幹細胞性に対する影響を調べるため、各細胞をクレアチニン・キナーゼ阻害薬で処理しCD44、LgR5、およびnucleosteminの発現についてRT-PCRで調べた。その結果、いずれの細胞でも幹細胞マーカーは著明に低下を示した。このことからクレアチニン・キナーゼの阻害は、大腸癌細胞の幹細胞性と細胞増殖を抑制すると考えられた。これに対して、C2C12マウス筋芽細胞をクレアチニン・キナーゼ阻害薬で処理すると、癌細胞に比較し増殖抑制は乏しく筋成熟度も保たれた。これらの知見から、クレアチン・キナーゼの阻害は、高い抗腫瘍効果に対して骨格筋障害は乏しく、がん性サルコペニアにおいて有効な治療方法であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
クレアチンキナーゼの阻害による、癌細胞に対する抗腫瘍効果と骨格筋芽細胞に対する障害性の低さが明らかになり、がん性サルコペニアを避けた抗腫瘍治療の可能性が示唆された。
今後、動物実験を用い担がん体におけるクレアチンキナーゼ阻害のサルコペニアに対する効果を検討する。
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