今年度はこれまでの研究成果のまとめを中心に進めた。その結果として、高負荷運動群、中等度負荷運動群、コントロール群に分け8週間の継続した運動を実施した場合、脳内酸化ストレスの指標とした3-NTは海馬において高負荷運動群が他の2群に比べて有意に低い結果を認めた。BDNFのおいても海馬において高負荷運動群が他の2群に比べて有意に低い結果を認めた。血液中の酸化ストレス指標としたd-ROMsテストでは8週目において中等度負荷運動群とコントロール群が高負荷群に比べて有意に低い結果となった。血中の抗酸化指標としたBAPテストでは8週目において高負荷運動群が中等度運動群とコントロール群に比べ有意に抗酸化力が低い結果となった。 このことから高負荷運動は身体における酸化ストレス動態に最も影響を与えるが、測定する指標や試料により影響は必ずしも関連しないことが示された。また、脳内活性窒素種の測定においては運動に伴う脳血流量変化に関係する可能性が示唆された。 研究期間全体を通じて、予定していたPD患者に対する症状や酸化ストレスに対する運動介入効果の検討は新型コロナウィルス感染症の影響により実施することができなかった。そのため、動物を用いて運動と酸化ストレス動態に関する基礎的な検討を中心に行い、高負荷運動が酸化ストレス動態にもっとも影響を与える事が示された。 また、今回の動物実験で得られた結果をPDの動作変化の検討に反映させるため、PDモデルラットに対しリーチング動作を用いた動作解析を試み、測定方法を確立した。
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