回復期リハビリテーション病院に入院した患者を対象に調査を実施した(データ収集期間:2020年7月から2021年3月まで).入院時にカナダ作業遂行測定(COPM)で個々の患者が実現を希望する作業を特定し,遂行度と満足度の測定を実施.約1ヶ月後の再評価の際にCOPMの他にTransition Index(TI)を外的基準として評価.TIでは,COPMで特定された各作業に関して「それぞれの作業を行う上で感じていた困難さはどの程度変化しましたか?」という問いに7件法(1:困難さは完全になくなった, 4:変化なし, 7:とても悪くなった)で主観的に測定し,TI1-3を改善,TI4を不変,TI5-7を悪化と定義した. 本研究では,臨床上意味のある最小重要差(MIC)を算出するために予測モデリング法(MICpredict)を適応した.MICpredict は,感度と特異度の比である尤度比が1になるときの変化量をMICとする手法であり,近年ROC(受信者操作特性曲線)に比してより精度の高いMICの算出ができるとされている.しかし,解析対象における改善群の比率が50%ではない場合,バイアスが生じるとされており,人数比を是正する調整式を適応しMICadjustを算出する.TIの結果から80名が改善群,17名が不変群,3名が悪化群となった.悪化群となった3名を除外して,計97名を解析対象とした.改善群の比率が82.5%(80/97名)だったため,調整式を適応させたMICadjustを採用した.解析対象者の属性は,男性36名,女性61名,年齢73.6±12.6歳(36-97歳)だった. MICadjustは遂行度が2.20(95%CI: 1.80-2.59),満足度が2.06(95%CI: 1.73-2.39)となった. 令和3年度は,上記の研究実績のうちデータ解析および論文執筆を実施した.
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