最終年度は、幼児の発育過程における下肢アライメントの変化と内側広筋の発達の関連について、Clin Biomechに投稿しアクセプトされた。また、第33回日本臨床スポーツ医学会で学会発表を行った。ここでは、1歳児に認めるO脚は、2歳児には矯正され、内側広筋の筋量は、2歳から3歳にかけて発達することが分かった。また、2歳児、3歳児の肥満幼児は、O脚が残存し、内側広筋の発達が悪いことが分かった。これらのことから、O脚や内側広筋の発達は、生後から1歳児の発達であるハイハイや歩行開始時期などの運動発達ではなく、1歳児以降の運動量や栄養過多が、O脚の矯正力や内側広筋の発達力に影響を及ぼしていることが推測される。 今回の科研の研究課題全体を通して、若年女性でO脚の人は、一般的に、内側広筋の筋量が発達しているが、そのO脚の中でも内側広筋が低下している人は、歩行立脚期の荷重応答期の内反モーメントが大きく、膝関節内側にかかる荷重量が大きいことが予測され、将来的に内側型変形性膝関節症の危険性が高いことが考えられる。これは、若年期から変形膝関節症を発症する特徴がすでに出現している可能性がある。また、1歳から3歳までの運動量が、O脚や内側広筋の発達に影響を及ぼし、成人期で認めるO脚や内側広筋の筋量の個人差と因果関係が少なからずあることも予想される。 アラメント異常のO脚だけでなく、内側広筋の筋量も、内側型変形性膝関節症の発症に関わりがあることが示唆され、これらの因子と、内側型変形性膝関節の早期診断と注目されている内側半月板の逸脱との動態的関連性を明らかにすることができれば、変形性膝関節症の予防対策の考案につながる一助となる可能性がある。
|