研究課題/領域番号 |
19K19937
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
九里 信夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (10761299)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドーパミン / 光学イメージング / 脳卒中 / モデル動物 / in vivo / リハビリテーション / 経頭蓋電気刺激 / 脳活動 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、中脳腹側部に局在するドーパミン神経の活動操作が脳血管障害後の運動機能回復に与える影響を明らかにすることを目的とする。本年度は、ドーパミン神経を操作する適切なタイミングを検討するため、げっ歯類の中脳腹側部で生じる神経活動を運動課題中に計測するための光学系をセットアップし、リーチング動作、および、トレッドミル走行時の神経活動計測を実施した。アデノ随伴ウイルスを用いて蛍光カルシウムタンパクを発現させた野生型ラットを対象とした神経活動計測の結果、リーチング動作中において、餌を掴み取る際に神経活動が生じることが明らかとなった。神経活動計測は片側中脳腹側部から実施したが、上記のような神経活動は左右いずれの上肢を使用した場合にも計測された。トレッドミル走行時には、走路の駆動開始時と停止時に神経活動が強く生じ、これらの活動が生じるタイミングは走路の駆動開始(停止)直前に生じる音刺激の有無によって変化することが確認された。 また、中脳腹側部の神経活動を細胞膜電位レベルで解析するため、膜電位感受性色素を用いた光学イメージングを脳深部で行うための研究手法開発に取り組んだ。膜電位感受性色素を透過可能な半透性を有するアテロコラーゲン膜を用いたイメージング手法を提案し(Kunori and Takashima, Micromachines, 2019)、本法を用いた脳深部膜電位イメージング計測の結果について、解析を進めている。 さらに、中脳腹側部を非侵襲的に活性化させるため、大脳皮質上から印加した電気刺激が、刺激電極直下の神経活動、皮質領野間神経伝達、および、中脳腹側部の神経活動に与える影響について明らかにした(Kunori and Takashima, Brain Research, 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中脳ドーパミンを操作すべきタイミングについての知見を得られているとともに、新たな光学計測手法の提案や、非侵襲的操作手法の検討を進めることができている。次年度以降の成果発信に向けた神経活動計測と行動計測データの解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
脳卒中モデルを作製し、運動機能回復の過程で中脳腹側部に生じる神経活動変化を明らかにする。また、光遺伝学や薬理遺伝学を用いた中脳腹側部の神経活動操作が、損傷後の運動機能回復に与える影響について検討する。一方、当初予定していた中脳と一次運動野間の神経回路の逆行性標識は、逆行性標識される神経細胞が極めて少ないことがこれまでの解剖学的実験により明らかとなりつつある。そのため、当該神経回路の活動を選択的に計測・操作することは難しい可能性がある。逆行性標識が困難な場合、中脳腹側部にウイルスベクターを投与し、順行性標識された神経終末を一次運動野にて操作することで実験目的を達成することは可能であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度、ウイルスベクターを感染効率を検討する際、米国より複数のウイルスベクターを購入するための予算として300,000を前倒し支払い請求した。ある程度余裕をもたせた金額を前倒し請求したため、結果として次年度使用額が生じた。当該助成金は当初の予定通り、ウイルスベクターの追加購入費用として使用する予定である。
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