本研究は、児童生徒の障害理解が進みかつ楽しめる「アダプテッド・スポーツ(以下、AS)教育」のプログラムを開発するため、「体験を含むAS授業」が主に児童生徒の障害イメージに及ぼす影響および児童生徒のAS(学習・体験した各競技)に対する印象について明らかにすることを目的とした。 新型コロナウィルスの蔓延に伴い大部分の実践・調査が中止となり、当初計画していた同一校における複数回の介入を見直すことになった。よって複数の協力校において一過的なスポーツ体験を含む授業を行い、児童生徒の学びの内容や体験してみての所感、授業内容・各競技に対する感想について、参与観察および授業後に配布する自記式アンケートによって把握することとした。テクストデータはM-GTAの手法を参考に整理した。 授業は2単位時間連続しておこない、①今日の障害概念(WHOのICF=社会・文化と接した際に困る状態)、②AS概念(実践者にあわせてルール・用具を工夫する方法論的概念である点)についてスライドを用いて解説し、③複数のAS体験をしてもらう3部構成とした。体験は、車いす競技(バスケ、陸上、ラグビー、カーリング)フライングディスク、アンプティサッカー、ブラインドサッカー、ボッチャを採用した。 結果、児童生徒はAS授業を通して「共生に向けた障害理解の深まり」「ASに関する理解の深まり」「競技に関する知識の獲得」を実感し、AS授業が「ポジティブ経験」として捉えられていたことがわかった。障害に関する科学的知識を獲得した上でASを体験したことが「ルールや用具を工夫すれば障害状態でも楽しめる」ことを実感させ、障害者の能力への気づきや共生・平等意識の醸成をもたらしたことが伺えた。また、普段使用しない用具を用いてスポーツをすること自体が児童生徒にとって楽しい体験となり、そのことが積極的に取り組む姿勢につながり学習効果を高めたことが伺えた。
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