アスリートが心理サポートに求める効果は多様であるものの、従来のメンタルトレーニングの技法においては、多様な効果を一つのトレーニング法によって導くことが難しく、時間的な制約から、アスリートの多様なニーズに応えることが出来ないという課題があった。 このような課題を解決する方法として近年、マインドフルネス・トレーニングが注目されている。すでに先行研究において、アスリートに対するマインドフルネス・トレーニングの活用が、アスリートのパフォーマンスやメンタルヘルスに有効であることが報告されている。さらに、マインドフルネスのトレーニングは通常、集団プログラムとして実施することが想定されており、アスリートがチーム単位で参加することによって、チーム力向上といった効果もまた、期待することが可能である。 そこで本研究課題として、令和3年度においては、アスリートに対するマインドフルネス・トレーニングを実施し、アスリートのパフォーマンスとメンタルヘルス、また所属するチームの力:集団効力感への効果について検討を行った。プログラムの実施前後の時期において、複数の効果指標を用いて介入群および比較対照群への測定を行った。効果検証を行うに際し、介入群のうち、機能的な変化が認められた対象者を有効群、変化がなかったあるいは非機能的な変化が認められた介入群の対象者を無効群とし、対照群間とのプログラム実施前後における効果指標の変化の差異について検討した。その結果、心理的パフォーマンスや集団効力感の得点において交互作用が有意であり、単純主効果の検定の結果、有効群において心理的パフォーマンスの得点が有意に上昇するとともに、無効群や比較対照群よりも有意に得点が高いことが確認された。また抑うつ不安の得点も、無効群で有意に上昇し、比較対照群では有意傾向ではあるものの上昇する一方、有効群では変化しないことが確認された。
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