本研究の目的は,腰部および下肢に貼付した慣性センサから得られる身体各部の運動データとディープラーニングを用いて跳躍動作を評価するシステムを構築することであった.令和元年度は,慣性センサデータを絶対座標系での並進加速度および角速度に座標変換するためのカルマンフィルタを構築した.また,跳躍動作の評価に用いるニューラルネットワークについて,多層パーセプトロン(Multilayer perceptron,MLP),畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network,CNN),長・短期記憶(Long short-term memory,LSTM)の3つを比較した結果,垂直跳における地面反力の推定精度はLSTMで最も高かった.したがって,本研究ではLSTMを用いて跳躍動作評価システムを構築することとした. 本年度は被験者数を増やすことに加えて,用いる慣性センサの数の影響について検討した.具体的には,腰部,大腿,下腿,足部の4箇所に貼付した慣性センサのうち,1)4つ全てのセンサを用いる,2)腰部と足部のセンサを用いる,3)腰部のセンサのみを用いる場合の3条件を設定した.条件ごとにカルマンフィルタで座標変換した慣性センサデータを入力,地面反力および関節トルクの時系列データと踏切時間を出力としたLSTMを構築し,それぞれの推定制度を比較した.その結果,踏切時間や地面反力,関節トルクなどの推定精度には条件間に有意な差はみられなかった.したがって,跳躍動作の評価には,用いるセンサ数の影響は小さいことがわかった.
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