研究課題/領域番号 |
19K19950
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
成田 健造 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任助教 (70836999)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水泳 / バタ足 / 流体力学 / 抵抗力 / 推進力 / 効率 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多角的な視点(流体力学や運動効率など)による調査を通して、クロール泳におけるバタ足の役割を体系化することである。その中で、初年度にあたる2019年度は「クロール泳でのバタ足の有無が泳者に働く抵抗力や泳者の上肢動作、さらに手部で発揮された推進力に与える影響について分析すること」を目的とした。 ヒトが泳ぐ時に腕と脚の両方を動かすが、クロール泳でバタ足を用いることは間接的に上肢(腕)動作を変化させ、泳者に働く抵抗力や手の平が発揮した推進力にも影響する可能性がある。これについて検証するため、助成者らが開発したMRT法(Narita et al. (2017) J Biomech)という抵抗計測法を用いてクロール泳でバタ足を用いた時と用いない時の抵抗力を計測し、さらに3次元動作分析(モーションキャプチャシステムを利用)、手の平で発揮された推進力計測(小型防水圧力センサによる圧力分布計測法)をおこなった。その結果、同じ速度で泳ぐ時、バタ足を用いた場合には抵抗力が大きくなる一方で、手部で発揮された推進力は小さくなることが明らかとされた。これは、バタ足が推進力を発揮していることを証明する結果である。さらに、手部での推進効率(手部によって水に伝えられた力の中で推進に利用された力の割合)はバタ足を用いることで低い値を示したことから、クロール泳でのバタ足の利用は抵抗を大きくし、手部の推進効率を低くすることがわかった。しかし、今回の実験でバタ足を使わない実験の時に、泳者は浮力のあるプルブイを用い、実際のレースとは離れた状況であったため、次年度はバタ足の利用方法の違い(例えば、控えめなバタ足と力強いバタ足)による抵抗力などへの影響について調査する。これについての研究相談をするために、水中での動作分析や推進力計測ができる環境の整った鹿屋体育大学へ訪問し、実験実施の了承を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の目的である「クロール泳でのバタ足の有無が泳者に働く抵抗力や泳者の上肢動作、さらに手部で発揮された推進力に及ぼす影響について分析すること」を達成できた。 おおむね順調に進展している理由として、抵抗測定におけるロードセルを保有し、分析方法に既に慣れていたことが挙げられる。さらに、本助成金で動作解析用のソフトウェアを購入できたことがスムーズな分析を可能とした。 また、動作計測時に用いたモーションキャプチャシステムや圧力分布計測法のための小型圧力センサ、さらに実験用回流水槽を筑波大学水泳研究室より借用できた。次年度からは筑波大学に加え、鹿屋体育大学での実験も予定しており、実験実施に関する利用・借用の許可は既に得ている。 また、クロール泳でのバタ足に関する知見を高める上で、2019年度は既に収集済みの背泳ぎのデータを用いて学会発表や論文投稿をした。その過程で、クロール泳のバタ足について他の研究者とディスカッションしたことが、広い視点で本研究課題を進めることが理由の1つとして考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は「クロール泳でのバタ足の利用方法の違いが泳者に働く抵抗力や運動効率、上肢動作や手部で発揮した推進力に与える影響について明らかにする」ことを目的とする。泳者は泳ぐ速度に応じて、バタ足のビート数(左右の腕を1回ずつ回す時にバタ足を何回打つか)を変化させて泳ぐ。そこで、ビート数の違いによる抵抗力や運動効率への影響を調査し、泳者がレースプランに応じてバタ足の利用方法を調整する際の指標とする。対象者は男子大学競泳選手8名とし、低・中・高速度の3段階でクロール泳でのバタ足のビート数が6回(最も一般的に用いられているビート数:6ビートキック)の場合と、2回(2ビートキック)の場合での試技を行う。その際の分析項目は2019年度と同様で、抵抗力、推進力、動作分析である。その際に用いる圧力分布計測時の防水型小型圧力センサの追加購入を予定している。さらに、本研究課題に関する研究論文の国際誌への採択を目指す。 最後に2021年度は「クロール泳中のバタ足の役割に関する総説を国際誌に投稿する」ことを目的とし、本研究課題及び先行研究の報告をまとめ、バタ足に関する総説を国際誌に投稿する。さらには、水泳に関わる研究者、コーチを対象としたセミナーを開催し、本研究テーマをコーチング現場にも還元し、指導に活かすことを最終目的とする。なお、そのセミナーの開催方法について、他の研究者やコーチ、選手に相談して準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、動作解析用ソフトウェアを予定よりも安価に購入できたことが理由として挙げられる。具体的には、座標データから速度や角度情報を抽出する作業を本ソフトウェア上でやらず、他のソフトウェアを用いて自身で計算することにした。そのため、座標データを得るためだけの安価なソフトウェアを購入し、出費を抑えることができた。そのため、この費用分、2020年度の実験時に用いる小型圧力センサの購入費用に充てる予定である。 次に旅費について、参加予定の学会が近郊で開催されたこと、新型コロナウイルスの影響で、年度末に参加を予定していた学会や研究打ち合わせがキャンセルとなったことが理由として挙げられる。2020年度に2度の国際学会での発表(演題登録済)やその他研究相談を予定していたが、こちらも新型コロナウイルスによる影響で未定であり、今後の社会情勢により判断する。
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