健康寿命の延伸は超高齢社会における喫緊の課題である。国内外において運動による老化抑制効果が見出されていることから、同効果の分子メカニズムの解明が希求されている。そこで本研究は、細胞外マトリックス分子パールカンによるメカノトランスダクション、特にミトコンドリアへの影響の観点から骨格筋による運動効果機構の解明を目指す。 これまで野生型マウス、パールカン欠損マウスに運動負荷(Treadmill運動)・免荷(尾部懸垂、神経切除)を行うことで、パールカン欠損骨格筋におけるシグナル変化を解析してきた。これら動物モデルの糖鎖関連遺伝子の解析によりヘパラン硫酸鎖の構造変化が骨格筋機能に関与している可能性が見出されたことから、本年度は6-o sulfationと骨格筋について更なる検証を行った。 また動物モデルに加え、in vitro運動モデルを構築することで骨格筋が他の臓器に及ぼす影響を解析することを試みた。電気刺激装置を用いた骨格筋運動モデルでは、電気刺激時間に応じ運動シグナル系の変化が認められ、培養液中のマイオカイン分泌量解析でも適した細胞運動モデルの構築が可能になったと思われた。現在、本アッセイ系を用いた神経細胞への運動効果伝播機構の応用解析を行っているが、既に易興奮性を確認しているパールカン欠損筋管細胞から得た成果、骨格筋組織の細胞外マトリックス構造を残した脱細胞シートを用いたin vitro運動モデル系からの成果を組み合わせることで、更なる研究発展が期待される。
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