研究実績の概要 |
本研究の根幹となる反復把握法とニューロフィードバックの相乗効果の検証について、実験データの取得を開始した。16名よりデータ取得を完了しており、現在は、データ取得の継続とともに当該データの解析を進めている。 また、刺激前陰性電位(stimulus-preceding negativity: SPN)と呼ばれる島皮質を主な発生源とする事象関連電位の機能的意義に関する研究成果報告を行なった(Hirao et al., 2021; 松橋・平尾・正木, 2021)。自らの行為がどのような結果をもたらすかをフィードバックとして確認することで、ヒトはその行為が自らに及ぼす影響を学ぶことができる。Hirao et al. (2021)では、fMRI実験と脳波実験を通して、フィードバック刺激の予期に関する島皮質活動が、「行為と結果が随伴していない条件(e.g.,コンピュータが自動で選択した際)」よりも「行為が結果に随伴している条件(e.g.,自分が選択した際)」で増大することを報告した。本研究の結果の一部は、Psychophysiologyにおいて論文として成果公表したものであった(Hackley, Hirao et al., 2020)。ヒトは、暗黙のうちに運動結果の予測しており、その予測は運動パフォーマンスに影響を与えることが示唆されている。本研究のSPNは運動結果の予測とは異なる文脈で計測されたものではあるが、得られた予測の神経基盤に関する基礎的な知見は、あがりの神経基盤を理解するために役立つものとなる可能性がある。その他、運動関連の知見として、右頭頂部位におけるSPN振幅値の個人差が、運動学習の進度と関係する旨の成果報告も実施した(松橋・平尾・正木, 2021)。
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