研究実績の概要 |
今年度は,以下の二つの実験を実施した。 一つ目の実験では,長距離走者を対象に,普段のランニングトレーニングに加えて,スプリント力と強い相関関係を示すことが報告されている大腰筋のレジスタンストレーニングを実施することによって,長距離走者のパフォーマンスが向上するのかどうかを検討した。被験者は,8名の長距離走者(5,000m走のパーソナルベストタイム,15:10.0±0:20.5, 平均値±SD)を用いた。トレーニング頻度および期間は週2回で12週間とした。大腰筋のレジスタンストレーニングとして,本研究では3種類実施した。トレーニング強度および回数は,初めの4週間が10RMの強度で10回を3セット,その後の8週間が10RMの強度で10回を4セットとした。その結果,トレーニング前と比較してトレーニング後において,大腰筋の筋横断面積が有意(P<0.01)に増大し、そして、長距離走者のランニングパフォーマンスの指標として測定した一定負荷運動時の運動持続時間が有意(P<0.01)に延長した。 二つ目の実験では,日本人エリートランナー1名を対象に,週2回で6週間のスプリントトレーニングが長距離走パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。スプリントトレーニングとして,50mの全力走を30秒間の休息を挟みながら5本実施するセット内容を,第1週では3セット,それ以降では5セット実施した(セット間の休息5分間)。その結果,トレーニング前と比べてトレーニング後において,100m走および400m走のタイムの改善が見られ,ランニングパフォーマンスの指標として用いた3,000m走のタイムの改善も見られた。 以上の実験から,長距離走者に対して,スプリント力と関係性がある大腰筋をトレーニングをすることや,スプリント力そのものを改善させることによって,長距離走者のパフォーマンスが向上する可能性が示唆された。
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