研究実績の概要 |
今年度は、長距離走者を対象としたスプリントトレーニング(ST)を実施することによって、スプリント能力の向上とともに長距離走者の運動パフォーマンスが向上するのかどうかを検討する実験を実施した。日常的にトレーニングを実施している長距離走者11名を対象に、週2回の頻度で6週間、STを実施した。STは、50 mの全力走を30秒間のインターバル休息をはさみながら5本を1セットとし、セット間5分の休息を設けた3-5セットで構成した。 運動パフォーマンスの指標として、3,000 m走を実施した。スプリント能力の指標として、100 m走および400 m走を測定した。トレッドミルを用いて漸増負荷運動テストを実施し、テスト時における酸素摂取量の最大値(最大酸素摂取量)を測定した。ランニングエコノミーとして、310 m/minの走速度時の酸素摂取量を指標として用いた。 STを実施した結果、preよりもpostにおいて、3,000 m走のタイムが有意(P < 0.05)に短縮(Pre: 525.8 ± 15.8 sec, Post: 521.1 ± 13.3 sec)した(諸事情によりn = 6)。また、100 m(Pre: 13.01 ± 0.53 sec, Post: 12.77 ± 0.55)および400 m(Pre: 57.07 ± 2.34 sec, Post: 55.86 ± 2.10 sec)のタイムも、preよりもpostにおいて、それぞれ有意(P < 0.05)に短縮した。また、ランニングエコノミーは、preよりもpostにおいて低値を示したが、有意差がなかった。最大酸素摂取量は、preとpostで有意な差が見られなかった。 以上の結果から、長距離走者を対象としたSTを実施することにより、スプリント能力の向上とともに長距離走者の運動パフォーマンスが向上することが示唆された。
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