研究課題/領域番号 |
19K19959
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
阿羅 功也 旭川工業高等専門学校, 人文理数総合科, 助教 (90781691)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 蹴鞠 / 蹴鞠技術 / SDGs |
研究実績の概要 |
これまで実施した蹴鞠研究の中では、誰しもが蹴鞠を実施できるよう蹴鞠に関する動きを写真や動画に記録することでわかりやすく再現してきた。しかし蹴鞠を練習する際にはレプリカ球(蹴鞠の鞠5寸の大きさに近いスポンジボール)を使用するほかなく、大人数での練習、グループでの練習を実施するためにはどうしても本物の蹴鞠使用球が必要であった。しかし手に入れるには困難という問題点に直面していた。そんな中、近年「けまり鞠遊会」が発足(2018年6月1日)され、蹴鞠を普及する動きが見られる。 けまり鞠遊会では蹴鞠使用球の作製方法の提示や蹴鞠体験活動を活発に実施している団体である。けまり鞠遊会の発足者である池田氏は数少ない鞠師であり、本研究代表者は池田氏より鞠作りのレクチャーを受けた。池田氏は「けまり普及のためには伝統工法での鞠も必要であるが、気軽に扱える鞠も必要である。」と主張し、この言葉からヒントを得て、蹴鞠文化普及のために蹴鞠で使用される鞠「蹴鞠使用球」の製作を手掛けた。 手に入りにくく高度な技術で製作される伝統工法とは異なり、安価な鞠を製作するための近代工法の検討をした。具体的には、けまり鞠遊会で実施されている鞠製作の技術を体系的にまとめ上げ、その技術をレーザ加工などの科学技術に変換し簡易的に鞠製作を行うことで担い手不足を解消することも目的の一つである。また、入手しにくい鹿革については、北海道特有のエゾシカ革やアライグマ革、ヒグマ革の使用を試みる。そうすることで革の入手の課題を解決し、さらに資源の有効利用という観点からも有益であるといえる。上記の革は使用されず捨てられることも多くあることから、入手しやすい状況にある。蹴鞠をSDGs で提唱されている持続可能な開発目標の対象に取り組む視野も広がり、蹴鞠技術の再現という目的も達成に向かっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蹴鞠の技術向上・再現度の確立を目的とした蹴鞠使用球の製作に時間を割いてしまった。 論文として残すことが出来ていないので「やや遅れている」。
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今後の研究の推進方策 |
毎年奈良県の談山神社にて実施されている(2020 年度はコロナウイルス感染対策のため実施していないが)「鞠会」が蹴鞠保存会によって開催され、国内外からは多くの観光客が訪れている。このように蹴鞠は歴史的史料をもとにした研究・文化保持の動きがなされている。本研究の特徴というと「触れることのできる蹴鞠」を目指している点にある。蹴鞠は元々貴族の文化・スポーツであることから、現代においても誰しもが気軽に体験できるものではない。上記した「鞠会」についても観光客は蹴鞠保存会が蹴鞠をしていると ころを眺めるにとどまっている。 今後はまとめあげた技術と気軽に扱える蹴鞠使用球を合わせることによって蹴鞠体験会を実施する。そうすることによって文化の普及という課題の解決に臨む。 これにより蹴鞠という文化・芸能を「観る歴史」にだけ留めておくのではなく、「触れることのできる歴史」として日本国内のみならず世界各国で蹴鞠をプレイできるまで体系的にまとめあげたいと考えている。蹴鞠の美しさや基本精神を実際に触れる体験を通じて普及させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ対策で京都への調査がのきなみ中止になったこと。同じくコロナの影響で蹴鞠体験会等の予定が崩れてしまったので今年度は実施する見込みである。
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