前年度に引き続き、噛み締めがスポーツ時の体幹安定におよぼす影響を調べることを目的として研究を進めた。重心動揺計上で、両腕を地面と平行に伸ばし、手掌を広げた状態を維持させた。振り子荷重装置で手掌に衝撃を加えた時の予測的姿勢制御(APA)と頭部の加速度を各条件間で比較した体幹安定性は5つのパラメータすなわち①体幹筋筋活動のOnset、②体幹筋筋活動量、③足底圧重心(CoP)の移動開始から被験動作完了までの時間、④CoP総軌跡長、⑤CoP最大変位量をアウトカムとし、頭部加速度についてはカスタムメイドマウスガードおよびセンサ貼付用ジグに貼付した加速度センサにより得られた加速度の最大値とした。それらパラメータを、噛み締め無し・噛み締め有りの2条件間で比較した。噛みしめ強度は、随意最大咬合力(100%MVC)に対する割合を用いて、30%MVCと規定した。 振り子荷重の結果生じる頭部加速度というアウトカムに対して、噛み締めがスポーツパフォーマンス発揮時の体幹安定に対しておよぼす影響を考察し、また頭部加速度を検証することにより、スポーツ時の頭部外傷の予防効果について考察することができると考えている。 ただし、当初予定していた、運動疲労度を血液検査で評価する研究については、新型コロナウィルス感染拡大の問題を受け、中止した。したがって、本課題では、噛みしめ強度を30%MVCとした時の、振り子荷重に対する体幹安定性についての研究をまとめ、国際誌への投稿を目指し、執筆中である。
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