これまで研究代表者らは筋の電気的活動と機械的活動を反映する筋電図と筋音図を同時測定可能な筋音/筋電ハイブリッドセンサを開発してきた。筋電図は筋収縮の入力信号であって、筋音図はその出力信号と捉えられることから制御工学でいう伝達関数と同様の取り扱いが可能で、筋音/筋電比(出力/入力)は筋収縮時の筋の利得すなわちパフォーマンスの指標として解釈することができる。この指標により関節運動に寄与する個別の筋の質的な評価が可能となり、筋収縮機能の評価だけではなく持続的な運動による疲労の影響をも捉えることが期待される。 2021年度は前年度に引き続き運動群を対象に筋音図と筋電図データの取得を実施した。これまでの研究成果から以下の知見が得られた。1)筋電図はすべての負荷においてコントロール群とアスリート群との間で差がなかったのに対して、筋音図は高負荷域でアスリート群がコントロール群よりも有意に大きかった。2)筋電図と筋音図の相関関係から、アスリート群の回帰直線は強い正の相関を認め、コントロール群よりも有意に大きい傾きが得られた。3)アスリート群の残差平方和はコントロール群よりも有意に小さかった。4)傾きを残差平方和で除した値はアスリート群とコントロール群との間で明らかな差が認められた。 運動中の筋パフォーマンスを表す指標としてDMPI(dynamic muscle performance index)= 回帰直線の傾き/残差平方和と定義した。DMPIは直接的かつ鋭敏に運動中の筋パフォーマンスを反映する指標として期待される。
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