研究課題
脳の健康維持・増進は、超高齢社会において国民の健康寿命延伸につながる重要な課題である。そこで本研究の目的は、認知症や脳卒中の危険因子である脳微小血管障害と脳循環の関連を明らかにし、さらに運動の効果を検証することとした。今年度は、中年期の運動習慣が脳循環へ及ぼす影響を調べ、その成果を論文発表し(Tomoto, Tarumi (corresponding) et al. J Appl Physiol 2021)、さらに米国生理学会のAPS Select Awardを受賞することができた。この実験は、定期的に有酸素運動を実践する中年者20名(MA群)と運動習慣の無い中年者20名(MS群)、および若年者20名(YS群)を対象とした。測定項目は頸動脈伸展性、脈波伝播速度、圧受容器反射感受性(BRS)、姿勢変化により生じる血圧と脳血流の変化(脳血流自動調節機能)とした。解析の結果、MA群では、MS群に見られた加齢に伴う頸動脈伸展性やBRSの悪化が軽減されており、さらにそれらの値はYS群と同等であった。一方で、安静時におけるMA群の脳血流調節機能は、MS群やYS群よりも低いことが示された。この結果から、中年期における有酸素運動は動脈硬化や血圧調節機能を改善するが、脳血流に対しては効果が小さいことが示唆された。また今年度は国際共同研究を通し、軽度認知障害者における脳内のアミロイドベータ蓄積が、安静時の血中酸素濃度(BOLD)信号の変動と関連することを明らかにした(Scheel, Tarumi et al. JCBFM 2021)。この結果は、脳循環がアルツハイマー病の原因とされるアミロイドベータ蓄積に関連し、脳循環の改善が認知症予防に有効である可能性を示唆した。総じて今年度は、原著論文8報と国内外での学会発表(欧州スポーツ科学学会議や日本運動生理学会)を行うことができた。
アメリカ生理学会が毎月選ぶAPS Select Awardを受賞した際のプレスリリース
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 7件) 備考 (1件)
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