研究実績の概要 |
曲走路疾走は直走路疾走とは異なり,走路に沿って身体の向きを変える必要がある.そして,身体の向きを変えるためには,走者は求心力を生み出す必要がある.数理モデルに置き換えると,求心力はF = m・v2 ・ R -1(m: 身体質量, v: 移動速度, R: 曲率半径)で表すことができ,曲率半径が同じであれば,移動速度が高いほど求心力も大きくなる.よって,移動速度が高い陸上競技短距離種目では,より大きな求心力を獲得するため,最適な身体内傾動作を習得する必要がある. 2019年度は,曲走路疾走中における支持期中の内傾動作と求心力との関係を明らかにする測定を行なった.大学陸上競技部に所属している男子大学生12名(年齢:20±1歳,身長:1.74±0.05m,体重:67.2±4.9)を被検者とし.陸上競技場における第1レーンに相当する曲走路で60m走全力疾走中の動作ついて三次元動作解析を行なった.その結果,左右脚支持期ともに,脚全体の平均角度と求心力の平均値との間には有意な相関関係が認められた.一方,胴体の内傾動作について,左脚支持期中における胴体の平均角度と求心力の平均値との間には有意な正の相関関係が認められたのに対し,右脚支持期では有意な相関関係は認められなかった.胴体の内傾動作の巧拙が,曲走路疾走中の求心力の獲得に関与している可能性があると考えられた.
|