陸上競技場の設計上,100m走以外では曲走路を高速で走行する必要があるにも関わらず,これまでの曲走路疾走に関する研究は圧倒的に限られている.その中でも、これまで曲走路疾走に関するバイオメカニクス的研究では,直走路と曲走路における動作を比較した報告、左右脚を比較した報告といったように曲走路疾走中の動作を特徴づける報告が多くを占めている。さらに、曲走路疾走中の動作の習得を目指した実践的なアプローチについては検討されていない。 2023年度は、フィードバックシステムを用いたトレーニングが曲走路疾走中の動作の習得に及ぼす影響を明らかにする測定を行なった。これまで計測を実施した被験者を対象に身体内傾角度の平均値および標準偏差を算出した。標準範囲外に位置していた大学陸上競技部に所属している男子大学生1名を対象とした。陸上競技場における第2レーンに相当する曲率半径の走路にて、60mスプリント走5回を1セッションとし、週2回、4週間の計8セッションのトレーニングを実施した。走行中の身体内傾角度についてリアルタイムのフィードバックを行なった。トレーニング前後で、パフォーマンステストおよび動作分析を実施した。その結果,トレーニング前後における走速度と身体内傾角度には、顕著な差が認められなかった。これらの結果より、大学陸上競技部に所属している男子大学生には、フィードバックシステムを用いたトレーニングは、曲走路疾走中の動作の習得には必ずしも有効に作用するものではない可能性が示唆された。
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