今年度は,主に昨年度の改善点であった水中における全身の運動状態を計測するセンサスーツの,主にハードウェア部分に関する改良を行った.従来開発していた光ファイバーを用いた関節運動計測手法は,柔軟・軽量かつ防水が容易なため水中での計測に適しているという利点があったが,ファイバーの取り付け方による計測精度への影響や着脱の簡便さに難があった.そこで,モーションキャプチャー技術として一般的に用いられている慣性センサを用いた運動計測手法を導入することとした.ここでは,伸縮可能な導電性繊維を用いて衣服に慣性センサを直接埋め込むことにより,着脱の手間及び毎回の取り付け位置のばらつきを低減することが可能となった.このセンサスーツを用いて,今後は回流水槽等の設備を用いた実験や実時間フィードバックによる運動学習効果の検証といった実験を継続していく予定である. また,提案手法の陸上競技への応用として,三段跳びのトレーニングへの適用も行なった.ここでは,三段跳びにおいて重要な役割を果たす右足の股関節及び膝関節の運動を計測し,それを音響情報に変換して着用者に実時間でフィードバックすることを試みた.それにより,複数の関節が空中でどのように連動しているかといった,競技者自身では知覚が困難な情報を音響情報でフィードバックすることで,自身の運動状態を把握することの助けになるとともに,競技力の向上につながるトレーニングの可能性を示唆する結果が得られた.
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