研究実績の概要 |
過度な運動刺激は,酸化ストレスを増大させ,筋痛や筋損傷を誘発する.抗酸化能マスターレギュレーターである転写因子Nrf2は,活性化することで酸化ストレスに対する保護効果を誘発する.スルフォラファン (SFN)は骨格筋内Nrf2を活性化し,酸化ストレスに対する保護効果を誘発することが報告されている.当研究課題の初年度においては,SFNサプリメントの摂取期間を明らかにした.2週間の摂取で末梢血単核細胞中のNrf2関連遺伝子が増加したため,このデータを基盤として,本年度の運動負荷実験では摂取期間を2週間と定め解析をすすめた. 目的は,ヒトにおける2週間のSFNサプリメント摂取が運動誘発性の筋痛・筋損傷と酸化ストレスを抑制するか明らかにすることとした.大学生16名を無作為に2群に分け,一方の群にはSFNを朝昼晩2週間継続的に摂取させた.肘関節屈曲時における最大筋力の70%の負荷となるよう,重量を設定し,非利き腕の上腕二頭筋に伸張性運動を行い,筋痛を誘発させた.その後,4日間継続的に主観的筋痛と血中筋損傷マーカー(CK, LDH, AST, ALT)を解析した.SFN摂取により,筋痛は運動2日後以降で有意に抑制され,血中CK濃度は運動2日後で低値傾向を示した(p<0.081).酸化ストレスマーカー(MDA)は運動2日後で有意に低値を示した 2週間のSFN摂取は,運動負荷に誘発される筋痛・筋損傷を抑制した.その過程には,骨格筋内のNrf2活性化による抗酸化能向上の関与が考えられた.
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