過剰な運動刺激は,活性酸素種の産生を高め,骨格筋内酸化ストレスが増大する.その結果,筋組織の損傷,筋収縮能の低下を引き起こす.抗酸化ストレス応答を司るNrf2は,生体の維持,防御に関与する.一方,Nrf2を活性化させるスルフォラファン(SFN)は,酸化ストレスに対する保護効果を誘導する.近年,マウスにおけるSFN投与は運動誘発性の酸化ストレス,筋損傷を抑制することが報告されている.しかし,ヒトにおける運動後の筋痛・筋損傷にSFN摂取が及ぼす影響については未知であった. 2週間のSFN摂取により,末梢血単核細胞中のNrf2下流遺伝子は増大した.また,触診時筋痛は運動2日後で有意に低値を示した.運動2日後に関節可動域の低下が有意に抑制された.血清CK上昇が抑制される傾向が見られた.血清TBARSは,運動2日後に有意に低値を示した. 本研究では,2週間のSFN摂取によりNrf2が活性化し,その下流抗酸化遺伝子が誘導されることで抗酸化能が増大することが推察された.その結果,伸張性運動による酸化ストレスを抑制し,筋痛の抑制,筋損傷の抑制傾向が示唆された. ヒトにおけるSFNの摂取は運動誘発性酸化ストレスを抑制し,筋痛の抑制,筋損傷の抑制傾向を示唆した.本研究結果は,アスリートのパフォーマンスの維持・向上に寄与するだけでなく,一般健常者の運動志向を高め,健康状態やQOLの向上をもたらす可能性があるだろう.
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