研究課題/領域番号 |
19K19978
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡井 理香 広島大学, 教育学研究科, 助教 (40816104)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アスリートパスウェイ / スポーツインテグリティ教育 / 教育プログラム / 保健体育科教育 / ファーストコーチ |
研究実績の概要 |
本研究課題の初年度である2019年度は、スポーツインテグリティ教育における現状と課題を掌握することを目的に次の3点に取り組んだ。1)日本スポーツ振興センター、および日本オリンピック委員会の「トップアスリート、もしくはトップアスリートを目指すタレント・指導者・保護者」を対象とする教育・研修プログラムの方針と実施内容に関する情報収集。2)日本スポーツ協会のコーチ育成のためのモデル・コア・カリキュラム・コンピシーリストを基に質問紙調査を作成し、地域スポーツ指導者を対象とする調査を実施。3)地域のスポーツアカデミーにおいて、小学生3、4、5年生を対象にスポーツインテグリティー教育プログラムを実施。 以上の結果、以下の3点が明らかとなった。1)トップアスリートと競技団体の強化コーチに対するスポーツインテグリティ教育は日本のスポーツ界における喫緊の課題として注力され、日本オリンピック委員会が主催する研修の必須の項目として展開されている。しかしながら、その内容についてはメディアやSNS、ドーピングが中心であり、スポーツの本質的な価値や意義にふれ、個々がスポーツの誠実性・健全性・高潔性を深く考え、追及するプログラムは管見の限り行われていない。2)アスリートを育成する上でファーストコーチとなる可能性が高い地域指導者の40%以上がスポーツの意義や価値(スポーツの概念や歴史、文化的特性、社会へ影響等)についての指導を行っておらず、スポーツのインテグリティ(誠実性・健全性・高潔性)とそれを脅かす要因について、具体的な事例を挙げて説明することができない状況である。3)小学生や中学生年代の地域のスポーツタレントを対象に各都道府県が主催する教育プログラムの中にスポーツインテグリティは位置づいておらず、誰がどのように整備・実施していくかの見通しは立っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はスポーツ統括組織、競技団体、地域にアプローチし、スポーツインテグリティ教育に関する情報収集と現状把握を目標とした。また、日本オリンピック委員会が掲げる「人間力の向上なしに競技力の向上なし」という言葉から「スポーツと人間力」を切り口に教材を作成し、小学生を対象とするスポーツインテグリティ教育を実施した。 上記は当初の研究計画通りであるが、情報の収取や調査の範囲、教育実践の対象者は想定よりも限定的で小規模での実施となった。また、学校教育、とりわけ保健体育科教育におけるスポーツインテグリティ教育の可能性を探り、授業で活用可能な教材を作成することも目標のひとつに挙げていたが、本研究テーマに関心を寄せる小学校・中学校の先生方と情報交換を行った段階に留まっており、協同・協働体制の構築、および授業実践には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度の研究内容と結果および進捗状況を踏まえ、スポーツインテグリティ教育に関連する情報の収集と調査の対象を拡大するとともに、小中学生を対象とするスポーツ指導の場面と保健体育科教育の双方を視野に入れた教材開発と教育実践を推進する。また、本年度分も含めた教育実践の成果と課題について検証し、その結果を広く発信することが2020年の目標である。
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