研究課題/領域番号 |
19K19978
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研究機関 | 神戸医療福祉大学 |
研究代表者 |
岡井 理香 神戸医療福祉大学, 人間社会学部, 准教授 (40816104)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スポーツインテグリティ / 保健体育科教育 / 体育理論 / 中等教育 / 教師教育 |
研究実績の概要 |
本年度は、中等教育の体育科教育において、スポーツインテグリティに関する知識・理解、および思考・判断・表現力を高める授業を実践することを目指した調査、および教育実践を行った。対象は、スポーツ科学系の大学にて中学校・高等学校の教諭第一種免許状(保健体育)の取得を目指す教職課程の学生とし、保健体育科教育法、および教職総合演習の履修生計94名に、「中学校・高等学校で受けた体育理論の授業」と「スポーツインテグリティに関する知識・理解」に関する調査を実施した(有効回答者:85名, 90.4%)。また、そのデータを基に、自身の授業内でスポーツインテグリティに関する授業を実施し、学生の知識と理解を深めた上で、学生自身が授業を実践することのできる教材研究と教材づくり、および演習を行った。 調査の結果、1)中学校時の体育理論の授業について、内容を明確に覚えていると回答し、その具体的な内容を記すことができた者は85名中4名(4.7%)、高等学校の体育理論については10名(11.8%)であり、2)中学校、および高等学校における体育の授業で既習の事項については、回答者が多い順の3項目として「ドーピング」、「スポーツが体と心に及ぼす影響」、「スポーツのルールとマナー」が挙げられた。また、3)スポーツインテグリティという言葉に対しては、9名(10.6%)が既知であり、大学の授業で聞いた者、高校の授業で聞いた者が各3名、その他の情報源が2名であった。 これらの結果を踏まえ、教師教育の観点から、体育理論、とりわけスポーツインテグリティに関する授業を深化していくことの必要性、およびその内容と授業実践に関する情報共有の重要性が示唆された。教育実践の効果測定については現在検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はスポーツ競技、およびアスリートの育成・強化に関わる組織や関係者を対象に調査を実施し、スポーツインテグリティ教育に関する現状の課題や取り組みに関する情報収集を通して、当該教育の必要性と可能性について言及した。本年度は体育科教育と教師教育の観点から、中等教育の体育理論におけるスポーツインテグリティ教育の可能性について検討することを目的とする調査、および教育実践を行った。 その結果、保健体育科の教職課程においては、体育理論領域の「スポーツの多様性」、「スポーツの意義や効果、安全な行い方」、「文化としてのスポーツの意義」に関する知識・理解に基づく教材研究、および授業づくりと授業実践に係る教授に加え、各単元と深く関わりのあるスポーツインテグリティについての教師教育を展開していくことの意義と可能性が示唆された。一方、スポーツインテグリティ教育は、スポーツとSNS、暴力、ハラスメント、反社会的行為など、現代的な社会問題とも密接に関連しており、既存の教科書や教案では網羅できない内容も含まれる。これらのことから、アスリートやスポーツの指導者、アントラージュ向けの教育プログラムの深化だけでなく、学校教育現場において、「する・みる・支える・知る」の多様な観点からスポーツの意義や価値について本質的に学び、共に考える授業実践について引き続き検討していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度、および2020年度の調査と教育実践を踏まえ、2021年度はスポーツ指導者、および保健体育科の教員を目指す大学生を対象とする教育プログラムに焦点を当て、その具体的な内容と評価を検討する。そのために、スポーツの指導に係る資格関連の授業担当者、および保健体育科教育に関連する授業担当者と情報共有、および意見交換をしながら、スポーツインテグリティ教育の推進と深化を図る。また、大学における指導者育成や教師教育の観点だけでなく、地域のスポーツ指導者、および中等教育の教員と連携し、現場のニーズに応えるとともに、教育実践の効果測定について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により移動が大きく制限され、対面での調査が中止、もしくはオンライン実施となり、旅費による支出が当初計画よりも減少した。2020年度に実施できなかった調査は、2021年度に実施予定である。
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