研究実績の概要 |
本研究は健康維持に適切な運動量の上限を決めるために最大酸素摂取量と起立耐性機能の関係を明らかにすること、その関係を引き起こしている生理学的機序を明らかにすることを目的としている。本年度も昨年度に引き続き新型コロナウイルスの影響で被験者数を増加することが難しく、被験者数増員はわずかだった。当初の計画では最大酸素摂取量(VO2max)によって5ml/kg/分毎にグループ分けを行い、起立耐性能力を比較する予定であったが、前述のように被験者数が思うように増加しなかったため、まずはVO2maxの値順に3グループ(体力レベル低・中・高)に分け、起立耐性能力を比較した。VO2maxと起立耐性能力評価の実験方法はこれまでと同様である。被験者は健常男性28名(24±7歳)であった。VO2max値によって分類された3群[低群(n=11, VO2max:32.6±7.0 ml/kg/分), 中群(n=9, 47.6±5.2 ml/kg/分), 高群(n=8, 61.6±2.4 ml/kg/分)]でCSIを比較したところ、低群(CSI:1503±551 mmHg・分)と中群(1604±691 mmHg・分)の間には差を認めなかったが、高群(761±280 mmHg・分)は低群及び中群よりも低かった(vs L群: p=0.02, vs M群:p=0.02)。この結果よりVO2maxが50ml/kg/分程度までは起立耐性が維持される可能性が示唆された。昨年度の結果についてはこれから第77回日本体力医学会大会で発表を行う予定である。また、一昨年度の結果については米国スポーツ医学会議2021で発表を行った。今後は被験者数をできるだけ増やし、より細分化したグループ分けを行い、体力の上限を明らかにする。また、一昨年度、明らかにした体力レベルによる左室捻転運動の違いについてもグループ間で比較を行う。
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