研究課題/領域番号 |
19K19985
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平田 浩祐 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (00835746)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 筋損傷 / 柔軟性 / ストレッチング / 剛性率 / 超音波 / スティフネス |
研究実績の概要 |
本研究は,筋の硬さの筋間差および個人差が運動誘発性筋損傷の程度に及ぼす影響を明らかにしようとするものである.また,運動誘発性筋損傷が生じやすい筋の硬さを効果的に低下させるストレッチングを考案し,運動誘発性筋損傷に対する軽減効果を明らかにすることも目的とする.本研究により運動誘発性筋損傷の軽減方法が確立されれば,傷害リスク低減,運動継続の一助となると考えられ,ひいては健康寿命の増加,競技力向上に繋がることが期待される. 研究対象者は,若年男性とした.大腿後面の筋群であるハムストリングに対する筋損傷課題として,伸張性膝関節屈曲筋力発揮を全力で100回行わせた.筋損傷課題の前後および1~4日後にわたり,筋力や大腿の周径囲,股関節屈曲可動域,筋肉痛,そして,ハムストリング各筋の硬さを測定した. これまでに取得したデータに加え,2021年度はさらに8名分のデータを取得した.これまでに取得したデータから,運動課題後に,筋力の低下や周径囲の増加,関節可動域の低下,筋肉痛の発生が認められた.これらは,運動誘発性筋損傷の典型的な症状であり,本研究の運動課題により筋損傷が誘発されたと言える.また,筋損傷に伴う筋硬度の増加は,半腱様筋において認められたものの,大腿二頭筋および半膜様筋には認められなかった.すなわち,膝関節屈曲運動におけるハムストリングの筋損傷には筋間差があり,半腱様筋の損傷が顕著であることが示唆されている.今後,2021年度に取得したデータを解析し,筋の硬さと筋損傷の関係およびストレッチングによる軽減効果についてさらに検討していく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動により誘発される筋損傷は,それ以前(~半年程度)の運動誘発性筋損傷の経験により軽減されることが示されている.そこで,本研究は半年以内に顕著な筋肉痛(筋損傷)が生じていない男性を対象とする.すなわち,定期的なスポーツ活動やトレーニングを実施している者は対象外であり,突発的な運動による筋損傷であっても半年以内に生じた者は対象外である.このため,参加条件を満たす被験者を確保することが困難である.また,1人の参加者に対し連続した5日間の拘束が必要であり,1日の実験時間も1~3時間程度要する.さらに,コロナ禍により人間生体を対象とする本研究の進行に遅延が生じていた.しかし,研究期間の延長により,十分なデータを取得することができた.このため,おおむね順調に研究が進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,30名分のデータ取得が終了しており,データ解析を進める.運動誘発性筋損傷に筋の硬さが及ぼす影響およびストレッチングが筋損傷の軽減に有効な手法となり得るかどうか,データを精査し,研究成果の発表を行っていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の猛威により,2021年度も研究の実施が困難であった.このため,実験の実施機会が少なく,実験に参加する検者および被験者に対する謝金が少額に納まったことが一つの要因である.また,学会大会での発表や情報収集に関しても,現地に赴く機会が激減したため,旅費等の使用が生じなかったことも要因である. 2022年度は,追加実験のための諸費用(被験者および検者謝金や消耗品費),研究成果発表のための学会大会参加費および旅費,論文掲載費用などに研究費を使用する予定である.
|