近年、アンチ・ドーピング教育を受ける機会の少ない学生アスリートにおいて、従来の禁止薬物の情報提供のみに留まらない包括的な健康教育の必要性が指摘されている。本研究では、若手アスリートに向けて効果的な健康教育を行うため、アスリートの健康に関わる多職種の協力を得て国内外に向けたエンターテインメント健康教育教材を開発し、その教育効果を測定した。本研究で開発した教育教材は、教育対象者の感情に訴えかけることにより、従来の教育に比べより行動変容に繋がると考えられているストーリ性のあるエンターテインメント教育教材である。開発した教材を用いて大学生アスリートや高等専門学校生に向けた健康教育を行った結果、教育3か月後の評価において、包括的な健康知識やメンタルヘルスの変化がみられ、教育の効果が示唆された。開発した若手アスリート向けの健康教育教材を普及させることにより、将来のトップアスリート候補である若手アスリートの健全な身体づくりに必要な知識や行動の向上が期待される。 また、親の健康に対する意識や考え方は、子供の栄養摂取傾向や病気やけがの際の対応に多大な影響を与えているという仮説のもと、さらなるアンチ・ドーピング教育の普及を目指し、アスリートの保護者に調査を行った。結果、保護者のヘルスリテラシーと子供に対する医薬品、ワクチン、栄養ドリンクおよびサプリメントの摂取(接種)意思に関連がみられた。本研究では、親の我が子の健康に対する行動や意識を明らかにすることで、子供たちの健康に対する価値観が形成される際のプロセスを解明するための重要な情報を得ることができ、若手アスリートの健康支援にはその家族を含めた教育の必要性が示唆された。
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