研究課題/領域番号 |
19K19990
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山岸 卓樹 早稲田大学, スポーツ科学学術院, その他(招聘研究員) (10794696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 間欠的短時間高強度運動 / 骨格筋の活動レベル / 全身の酸素消費動態 / 局所の酸素消費動態 |
研究実績の概要 |
2019度は、極めて短時間で「持久性能力」および「骨格筋の量・機能」の改善をもたらす運動様式の解明を目指して、「スプリント時間が骨格筋の活動レベルおよび全身・局所のエネルギー代謝に及ぼす影響」を明らかにすべく研究を推進した。14名の健常成人男性を対象に実験室でのデータ取得および取得データの分析を遂行した。2019年度の研究成果の概要を以下に述べる。 基本的な身体特性および最大酸素摂取量の測定後、被験者には、2つの異なる運動課題①2セットx20秒スプリント(セット間休憩:160秒)、②4セットx10秒スプリント(セット間休憩:80秒)を、実施していただいた。両プロトコル間で総スプリント時間(40秒)およびスプリント:休憩比率(1:8)を統一した上で、スプリント時間そのもの(10秒vs.20秒)が骨格筋の活動レベル(運動課題実施前後の大腿部骨格筋におけるMR T2値の変動)および全身・局所のエネルギー代謝(運動課題実施中の全身・局所の酸素消費動態)に及ぼす影響をクロスオーバー試験により検証した。その結果、大腿部骨格筋の活動レベルおよび全身レベルにおける酸素消費量は両プロトコル間で同様に増大した一方で、局所(大腿直筋・外側広筋)における酸素消費量はスプリント時間の増加に伴い増大する(20秒>10秒)ことが明らかとなった。本研究により、有酸素性エネルギー代謝の増大および大腿部骨格筋の動員(大腿四頭筋・ハムストリングス・内転筋のMR T2値の有意な増加)は僅か40秒の間欠的高強度運動で達成されることが示された。このことは、極めて短時間で身体諸機能を高めうる生理学的刺激がもたらされることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は予定通り、異なる間欠的短時間高強度運動に対する全身・局所の一過的な生理学的応答を検証することができた。実験室でのデータ取得および取得データの解析後、直ちに研究成果をまとめ、2020年10月にスペインのセビリアで開催予定の国際学会(European College of Sport Science)での研究発表に向けて、抄録を提出し既に受理された。しかし、現在の新型コロナウィルスの状況次第では、学会発表を取りやめることも視野に入れている(当該学会も当初は7月開催予定であったが新型コロナウィルスの影響で10月末に延期された)。当該学会での発表の有無に関わらず、現在は論文執筆および2020年度の研究に向けて、改めて2019年に取得したデータを精査しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、2020年度は介入研究を実施する予定であったが、現在の新型コロナウィルスの状況を鑑みると、大変な時間を要する介入研究を年度内に遂行することは困難であることが想定される。したがって、2020年度は、2019年度の研究成果を進展させ、さらに時間効率に優れた運動様式を解明すべく、以下に示す研究計画を遂行する予定である。 まず、2019年度の研究では、研究成果の概要で述べたことに加えて、①大腿部の酸素消費量はスプリント開始15秒前後で最大値に到達する、②10秒スプリントを4セット反復した場合において、全身・局所の酸素消費量は3セットで最大となりそれ以降は頭打ち(もしくは僅かに減少)する、③20秒プロトコルは10秒プロトコルと比較し、セッション平均の運動強度は6%程高かったが(209±26%VO2max vs.203±23%VO2max, p<0.01)が大腿部のMRT2値の増加程度はプロトコル間で同様であった、ことが明らかとなった。 これらの結果を踏まえると、①大腿部の有酸素性適応を最大限に促すためには、15秒のスプリントが必要、②10秒以上のスプリントを反復する場合、全身・局所の酸素消費量が最大限に高まるのは3セットまで、③運動強度に5%前後の差があっても大腿部骨格筋の動員レベルには影響が出ない、ことが分かる。したがって、2020年度は、①全力15秒スプリント x 3セット、②95%15秒スプリント(全力スプリント時の95%強度)x 3セット、③90%15秒スプリント(全力スプリント時の90%強度)x 3セット、の3つのプロトコルを比較検証する。 短い運動時間に加え、運動強度(努力度)を一定程度減少させても、全身・局所に同様の生理学的刺激がもたらされることが明らかとなれば、より多くの人々にとって実践可能かつ効果的な運動様式の開発に繋がることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、当初の予定より主に人件費・旅費が低く抑えられたため、次年度使用額が僅かに発生した。2020年度分の助成金と合わせて、当該助成金は2020年度の実験に伴う人件費や施設利用料(例、MR装置使用料等)にあてる予定である。
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