研究実績の概要 |
2019年度の調査期間中(2019年6月~9月)に397件の練習が報告された(室内=177件, 屋外=220件)。熱中症の発生頻度は2.00/1,000 AE (95%CI, 1.21-3.08)で, 屋外の方が室内より高値を示した(室内, 1.34/1,000 AE, 95%CI=0.46-3.08; 屋外, 2.27/1,000 AE, 95%CI=1.42-3.44)。運動開始時のWBGTの平均は25.8±3.5°C (17.0-35.3°C)であり, 平均値は室内(26.8±3.1°C ; 範囲, 19.2-32.0°C)の方が屋外(25.0±3.6°C; 範囲, 17.0-35.3°C)より高値を示した。熱中症予防対策が講じられた146日(37%)において, 特に実践数が高かった取り組みは(1)休憩時間の増加, (2)水分補給回数の増加, (3) 運動強度の調整であった。実践された熱中症対策は1練習あたり1-5であり, 実践された熱中症対策数によって運動開始時のWBGTは異なった(F[5, 391]=46.87, p<0.001)。運動開始時のWBGTが28°C以上と未満の比較では, WBGTが28°C以上の条件において, 熱中症の発生頻度が16.99倍 (95%CI, 2.757-187.3; p=0.0006)であった。 以上のことから、高等学校の運動部活動における熱中症の発生率は海外の先行研究よりもやや高い数値を示すことが明らかとなった。実践された熱中症対策数は運動開始時のWBGTによる影響を受けていたが, 平均WBGT値が25.8°Cにも関わらず熱中症対策が講じられた練習日が全体の37%であったことから, 熱中症対策の実践に対する障壁を今後明らかにする必要がある。
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