研究課題
本年度は、クライオセラピーが影響する分子シグナルを探索した。我々が過去に報告した方法を用いて、C2C12筋芽細胞および3T3L1線維芽細胞に対し、冷却刺激を実施すると、早期にcAMP response element binding protein (CREB)のリン酸化の顕著な亢進がみられ、数時間のタイムラグを持ち、次いでAdenosine monophosphate-activated protein kinase (AMPK)の顕著なリン酸化の亢進が見られ、培養細胞に対する冷却刺激が、CREBおよびAMPKの顕著な活性化を引き起こすとを世界で初めて見出した。引き続く実験では、CREBの活性化に着目し、実験を行った、CREBの活性化はCREB-binding protein(CBP/p300)のリクルートを引き起こし、下流の遺伝子発現を増加させることが知られており、冷却刺激を行った場合でも同様の現象が起こるかどうか検討した。FLAGタグ付きのCBPをHEK293細胞にトランスフェクションし、その後冷却刺激を与え、CREBへのCBPのリクルートを免疫沈降法およウエスタンブロッティング法で確認した、その結果、CREBのリン酸化に伴いCBPのCREBへのリクルートが確認された。さらにCREBの結合領域であるcAMP responsive elementにルシフェラーゼ遺伝子を繋いだ発現plasmidを用い、冷却刺激によるCREB転写活性をHEK293細胞で確認したところ、冷却刺激に応じで、転写活性が有意に上昇した。マウスの筋組織を用いたex vivo実験でも、記の結果を支持するように、CREBのターゲット遺伝子であるPgc1aなどの発現が上昇した。これらの結果から、クライオセラピー(局所への冷却刺激)のターゲット分子の1つがCREBであることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度はクライオセラピーの分子シグナルを探索し、大きく変動する分子シグナルを同定出来た。
本年度は主に、培養細胞や、筋組織を用いた実験を行ってきたが、さらなる科学的根拠の構築のためには、生体(1個体)を用いる事が重要だと考えられる。現在適切なクライオセラピーの効果を正確に評価できるin vivoモデルを、マウスやゼブラフィシュを用いて構築している。構築後はオミックス解析を用いてクライオセラピー更なる効果と分子メカニズムを探索する予定である。
14,376円の残額である。実験の進行はおおむね順調であるため、本残額は物価変動などの影響による変動の範囲であり、大きく逸脱していない。また、消耗品を予定よりも安く購入できたため、支出を抑えられた。残額は次年度のin vivo実験の消耗品購入費として利用する。
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Preprints
巻: 1 ページ: 1-21
doi: 10.20944/preprints201904.0277.v1