2021年度はゼブラフィシュをモデル動物とした実験系を確立し、RNA-seqを兼用することでクライオセラピーの効果の分子メカニズムの解明に迫り、正常な筋に対するクライオセラピーはユビキチンリガーゼ関連遺伝子の発現を増加させ、筋のターンオーバーを加速させる可能性が強く示唆された。しかし、正常な筋に対する効果の解析にとどまっており、2022年度は、筋損傷モデルに対する効果の検証を目標とした。 まず筋損傷モデルを構築する必要があったため、ゼブラフィシュのDorsal finとCaudai finの間に存在する筋組織に打撲による閉鎖的損傷の作成を試みた。方法はマウスやラットの筋打撲モデルに関する先行研究を参考とし、鉄球の落下による物理的な損傷の誘発を試みた。麻酔下のゼブラフィッシュに対し、直径8mmの鉄球を目的の筋に対して様々な高さから垂直に落下させ、損傷の誘発を観察した。その結果30cmの高さからの落下が最も有益なモデルを作成できる事が確認できた。本手法であれば筋の急性損傷から回復までの一連を観察できると考えられた。次に筋損傷の顕微鏡下の評価系を確立するために、正常のゼブラフィッシュの筋凍結切片の作成と組織染色、データ解析法の開発を行った。その結果、概ね正確な結果を得られるように自身の実験スキルを伸ばした。 ここまでで、2022年度の研究は終了したが、今後チャンスがあれば、筋打撲モデルに対するクライオセラピーの効果を詳細に解析し、分子メカニズムの解明に努めたいと考えている。
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