研究課題/領域番号 |
19K20005
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
白井 祐介 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 助教 (40836251)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知的負荷 / 持久性パフォーマンス / 前頭前野 |
研究実績の概要 |
運動中の認知的負荷の増大が持久性パフォーマンスに及ぼす影響を検討するために,運動のみを行わせる条件と認知課題に回答させつつ運動を行わせる条件において運動継続時間を比較検討した. 実験1では,健康な成人男性11名および女性1名を対象として,運動継続時間と認知課題成績の関係について検討を行なった.その結果,運動中の認知課題 (ストループ課題) への反応時間は,安静時と比較して有意に増大 (遅延) することが確認された.運動継続時間は,各実験参加者の個人差が大きく,運動のみ条件と運動+認知課題条件で有意な差は認められなかったが,運動中の色名刺激 (あか、あお、みどり、きいろ) への反応時間の遅延量が大きかった参加者ほど,運動のみ条件と比較して運動継続時間が減少すること (r = -0.66, p = 0.028) が確認された. 実験2では,認知課題の遂行時に賦活するとされている前頭前野の血液動態と併せて,運動中の認知的負荷が持久性パフォーマンスに及ぼす影響について検討を行なった.実験2では,健康で活動的な男性9名および女性1名を対象として,運動のみ条件,運動+認知課題条件,運動+認知課題+スイッチ条件の3条件で運動継続時間を比較検討した.なお,運動+認知課題+スイッチ条件は,認知的負荷を高める試みとして,回答時のスイッチの割り当てをランダムに変更した条件である.その結果,条件間において運動継続時間に有意な差は認められなかったものの,運動+認知課題条件,運動+認知課題+スイッチ条件において,運動のみ条件と比較して,運動中の前頭前野における酸素化ヘモグロビン濃度の低下が大きい者ほど運動継続時間が減少すること (r = -0.78, p<0.01) が確認された.以上の結果から,運動時の認知的負荷の増大は,前頭前野の活動レベルを介して持久性パフォーマンスに影響を及ぼすことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,運動中の認知的負荷の増大が一定強度の持久性運動における運動継続時間に及ぼす影響を検討する研究計画であり,その計画を概ね遂行することができた.その結果,運動時の認知的負荷の増大が持久性パフォーマンスに及ぼす影響には個人差が認められることが明らかになった.さらに,認知的負荷が増大した際に持久性パフォーマンスの低下が大きかった者は,認知課題成績の低下が大きいこと,前頭前野における酸素化ヘモグロビン濃度の低下が大きいことが明らかになった.これらの結果から,運動中の認知的負荷の増大が運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討していくうえでは,各個人の特性について検討を行なっていく必要があることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,認知的負荷の増大がペース戦略の再現性に及ぼす影響を検討する計画である.その際,運動時間が10分間のパフォーマンステストを数回に渡って実施し,実験参加者毎に最適なペース戦略を確立させる計画であった.しかし,現在の研究環境では,高強度の持久性運動を複数回にわたって実施できる実験参加者をリクルートすることが困難であることに加えて,新型コロナウイルス感染症の影響によって実験実施の目処もついていない.そこで,2020年度は,実験環境が整い次第,2019年度に実施した実験結果の再現性の検討に取り組む予定である.特に,異なるスポーツ種目から実験参加者を募ることができれば,それぞれの体力特性や専門とするスポーツ種目の影響についても検討を行なう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
近赤外線組織酸素モニタについて,レンタル機を借用することができたため,機材購入のために計画していた支出が生じなかったことにより当該助成金が発生した.翌年度には,常に実験を実施できる研究環境を確立するために,翌年度分として請求した助成金をレンタル機の購入に当てる予定である.
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