研究課題/領域番号 |
19K20007
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
木戸 康平 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (50822730)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / レジスタンス運動 / インスリン感受性 / 糖取り込み / mTORC1 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、単回レジスタンス運動が骨格筋のインスリン感受性に与える効果とその制御メカニズムを解明することである。我々はこれまでに、単回のレジスタンス運動によるラパマイシン感受性mTOR複合体(mTORC1)シグナル活性が、運動後のインスリン感受性亢進効果を下方制御している可能性を明らかにしている。本年度は、mTORの阻害剤であるラパマイシンを用いて、mTORC1シグナル活性とインスリン感受性の因果関係を明らかにした。 具体的には次の2つの実験を行なった。まず、11週齢の雄性SDラットにラパマイシンもしくは生理食塩水を投与した上でレジスタンス運動を負荷し、レジスタンス運動によるmTORC1の活性化がラパマイシンによって抑制されるかを検討した。その結果、単回のレジスタンス運動は、骨格筋のmTORC1活性を運動6時間後まで有意に高めるが、ラパマイシンを事前投与することでその効果が消失することが明らかになった。 そこで次に、ラパマイシンもしくは生理食塩水を事前投与したラットにレジスタンス運動を負荷し、運動6時間後にインスリン刺激下における骨格筋糖取り込み速度を測定した。その結果、インスリン刺激による骨格筋の糖取り込みは、ラパマイシンを事前投与することで有意に増大した。以上の結果から、ラパマイシンによるmTORC1活性の阻害は、レジスタンス運動後の骨格筋インスリン感受性の亢進効果を増大させることが明らかとなった。本結果は、レジスタンス運動によるmTORC1の活性化が、運動後のインスリン感受性亢進効果を下方制御しているという仮説を支持するものとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、実験計画提出当初に予定していた通り、薬理的手法によって単回レジスタンス運動後のmTORC1シグナル活性とインスリン刺激による骨格筋の糖取り込み速度の因果関係を明らかにした。このことから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、単回レジスタンス運動によるインスリン感受性亢進効果の分子制御を検討する。これまでに、薬理的手法によって、骨格筋のmTORC1活性がレジスタンス運動後の骨格筋インスリン感受性に影響を与えていることを明らかにした。しかし、mTORC1活性がどのようなメカニズムを介してインスリン感受性を低下させているかの詳細や、mTORC1以外の制御因子の有無は明らかになっていない。そこで本年度は、新たな遺伝子改変動物を用いて上記分子メカニズムの解明に取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定額より試薬等の購入が安く済んだため、残額が生じた。よって、次年度に試薬等の消耗品を追加購入する。
|