我々はこれまでに、単回レジスタンス運動が、インスリン刺激による骨格筋の糖取り込みを促進することを明らかにしている。さらに、レジスタンス運動によって活性化するラパマイシン感受性mTOR複合体1(mTORC1)は、運動後のインスリン感受性亢進効果を抑制する因子であることを薬理学的手法にて明らかにしている。しかしながら、生理学的な実験条件下においても、運動によるmTORC1活性がインスリン感受性に関与するかは不明である。 そこで2021年度は、単回レジスタンス運動によるmTORC1の活性化を抑制する長時間の絶食が、運動後のインスリン感受性亢進効果に与える影響について検討した。 実験は、Wistar系雄性ラットを対象とし、飽食群と36時間絶食群の2群に分けて実施した。レジスタンス運動は、飽食もしくは36時間絶食状態のラットに対して電気的筋収縮を行うことで模倣した。筋収縮終了3時間後に骨格筋を摘出し、2-デオキシグルコースを含む培養液中でインスリン刺激を行うことで、インスリンによる骨格筋の糖取り込みを測定した。その結果、運動3時間後のインスリン刺激による糖取り込みは、飽食群と比較して絶食群のラットで有意に高値を示した。さらに、mTORC1の活性化によって抑制されるインスリンシグナル活性も、飽食群より絶食群の方が高値を示した。これはつまり、生理学的な実験条件下においても、レジスタンス運動によるmTORC1の活性化が、運動後の骨格筋のインスリン感受性亢進効果を抑制することを示唆しており、これまでの研究仮説を支持する結果となった。
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