研究課題/領域番号 |
19K20009
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓太 筑波大学, スポーツR&Dコア, 研究員 (50780227)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳振盪 / 安全啓発プログラム / 傷害予防 / スポーツ |
研究実績の概要 |
スポーツにおける脳振盪に注目が集まっている。これまで,様々な競技種目で脳振盪発生の予防策が導入されてきたが,有用性の高い脳振盪予防策は確立されていないのが現状である。そこで,本研究では,脳振盪を予防するための安全啓発プログラムをラグビーなど脳振盪の発生が多い競技種目毎に作成することを目指す。 そのために、まずは、スポーツ活動中に脳振盪の発生に繋がる動作やその状況を映像記録と外傷記録から明らかにすることが必要である。本年度は、昨年度から引き続き、スポーツ活動中に脳振盪の発生に繋がる動作やその状況を映像記録と外傷記録から明らかにすることを行った。 特に、高校ラグビーチーム4年分の傷害・映像記録を用いて、ボールを持った選手に起こる脳振盪の発生場面についての分析を行った。これまで、多くの先行研究では、タックルをする選手に注目が集まっており、ボールを持った選手に起こる脳振盪について、詳細な分析は少なく、貴重なデータである。その結果、コンタクトの際の姿勢やコンタクトが起こった後の倒れ方が脳振盪の発生に影響していることが明らかとなった。 また、上述の結果に加えて、安全啓発プログラムの開発に向けて、介入前後での効果測定で実施する調査項目の選定を行い、一定の方向性を定めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の平成31年度の計画は次の2つであった。①傷害・映像記録を収集する(対象チームの拡大)、②①の記録を基に脳振盪の発生に関わる因子を特定する。これらの計画に関して、進捗具合を以下に示す。 ①本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、様々なスポーツ活動が制限を受けたため、傷害記録・映像記録が満足に集められなかった。また、外部との交流も取りづらい環境となり、対象チーム数を拡張することができなかった。昨年度から継続している高校ラグビーチーム(1チーム)に関しては、傷害・映像記録を継続して収集できた。そのため、データの蓄積はできているが、計画していた対象チームの拡大には至らなかったため、やや遅れていると考えている。②に関しては、対象チーム数の拡大には至らなかったが、継続して記録が収集できた高校ラグビーチームのデータを分析し、ボールを持った選手に起こった脳振盪の特徴を明らかにすることができた。一方で、脳振盪発生のリスクが増加、あるいは減少する動作パターンを明らかにするには至っていない。 当初計画していた本年度の計画については、やや遅れていると考えているが、それを補う形で、次年度以降に実施予定であった安全啓発プログラムの開発を円滑に開始できるよう、介入前後での効果測定で実施する調査項目の選定を行い、一定の方向性を定めることができた。 以上のことから、現時点において、研究はやや遅れているが、次年度以降を見据えて研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は計画通りに対象チームの拡大ができず、進捗状況としてはやや遅れている。 次年度の計画は次の3つである。①傷害・映像記録を収集する(対象チームの拡大)、②①の記録を基に脳振盪の発生に関わる因子を特定する、③脳振盪の予防に向けた安全啓発プログラムを開発する。 次年度は、詳細な分析が可能になるよう、傷害・映像記録の収集を継続する。現在、傷害・映像記録の提供について承諾が得られているチームに加えて、茨城県内の高校ラグビーチームに、傷害・映像記録の提供を依頼する予定である。 対象チーム数を拡張することで、脳振盪発生に関わる因子の一般化を試みる。 また、②の結果を構成した脳振盪の予防に向けた安全啓発プログラムを開発する予定である。安全啓発プログラムの構成要素を検討するため、中学生、高校生、大学生に向けて脳振盪の知識や脳振盪を疑う症状を経験した際の報告態度について、調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた学会発表がオンラインでの開催となったことや、傷害・映像記録の収集を予定していた出張がキャンセルとなってしまい、その分の予算が未使用となってしまった。次年度以降、対象チーム数を拡張するため、直接の依頼や傷害・映像記録の調査に出向くことが増えると考えており、次年度に使用する。
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